マッサン
 高視聴率をキープし、いよいよゴールを迎えるNHK朝ドラ『マッサン』。この半年間、テレビの前でクギづけになった人も少なくないだろう。

 そこで、モデルとなった夫婦の孫にドラマと現実の違いについて直撃インタビューをした。

  “本物のマッサン”は、人心掌握術にも長けていたと、モデルとなったニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝と妻・リタの孫にあたる竹鶴孝太郎氏は語る。

「ウチの食事は、政孝がいないときは洋食で、いるときは和食が多かったのですが、必ず細かいところまでホメていたそうです。味覚を扱う仕事をしているからなのか、“大根がすりたてでいいね”とか“鮮度が保たれているね”とか。母にも“ここがおいしかったよ”といったねぎらいの言葉をかけていたそうです。人をおだてるのがうまかったんだなと思いましたね」

 家庭内だけでなく、いろいろな行事を積極的に企画することで、他人との距離も縮めていたという。

「よく自宅に会社の従業員やその家族、近くの町民なども呼んで、宴会や麻雀大会をやっていました。政孝が盛り上げて、リタが料理を振る舞うような感じで。河原に100人くらいを呼んで、のど自慢大会を開催したこともあったそうです。自分たちがどんな人間なのかをさらけ出すことで、信頼を得ていくのが彼のやり方だったんです」

 従業員の家族やご近所さんとも信頼関係を築くためにも、日々の努力は惜しまなかったという“マッサン”。

 そんな彼を知る孝太郎氏から見て俳優・玉山鉄二はどう映ったか。

「2度ほどお会いしたことがあります。まじめそうな方という印象でした。“政孝さんはどんな方でしたか? どんな演技をすればいいですか?”と聞かれたので“玉山さん流の演技をすればいいと思います”と伝えました。それと、記念品としてウイスキーグラスを贈ったんです」

 それは政孝が作った“竹鶴グラス”という特注品。彼がウイスキーの水割りを飲むために使用していた愛用品だったという。

「グラスの表面には、鶴の絵柄と和歌が彫られているんです。初めてお会いしたときに、“クランクアップしたら、これで祝杯をあげたらどうですか”言ってプレゼントしました」

 実際に玉山は、先日クランクアップを終え、この竹鶴グラスで至福の一杯を楽しんだという。一方で、リタを演じたシャーロット・ケイト・フォックスにはというと、

「初めてお会いしたとき、シャーロットさんは自分の役柄をつかめていないようでした。リタの若いころの写真は暗い顔ばかりしていて“それを見せられても……”と言っていて。そこで、僕とリタが写っている写真、つまりは孫と写っているほがらかな表情をしている写真を渡したんです。“これがシャーロットさんが最後に演じる顔です”と」

 すると、シャーロットは“イメージが湧いた!”と、とても喜んだそう。

「朝ドラは、過密スケジュールで収録し、毎日のように視聴率という結果を突きつけられる。とてつもないプレッシャーを感じるはずです。そんな彼らには、目標やゴールが見えるようなものを渡したかったんです」

 最後に、『マッサン』が放映されてよかったことについても聞いてみた。

「自分の“ルーツ”を再認識できたことですね。他人に描かれたドラマを見ることで、改めて彼らを意識するきっかけになりました。政孝はニッカウヰスキーの創業者でしたが、妻のリタはなんだったんだろうとも思うじゃないですか。

『マッサン』の舞台は、そんな昔の話ではないし、こうしてリタのことを知っている人がまだ存在する。また何かしらの形で、いろいろな人に彼女を知ってもらう機会を作りたいなと思っています」