■育児だけでなく、家族を考えるきっかけに

 ちっち君は東儀さんの趣味である古い音楽やクラシックカー、マンガなどに興味を持ち、一緒に楽しんでいますが、大人と子どもの線引きはきちんとあり、決して友達親子ではないと言います。

「友達親子って仲よしアピールをしていますけど、実は子どもから、嫌な言葉でいうと“ナメられやすい”状況ができるばかりだと思うんです。親はやっぱり高いところにいて、今は手が届かないけど、いつかはああなりたいという見本でいなければいけないと思います。そして、いつも話を聞くようにしていると、どんなに厳しいことを言っても、親は何でも話を聞いてくれる、いいことも悪いこともすべて受けとめ、のみ込んでくれる存在だと信じてくれて、子どもはそっぽを向かないんです。友達はそんな大きなことを何でも受けとめてくれませんからね」

 また、よくやりがちなのが、子どもが興味を持ったことに対して“また今度”と言ってしまうこと。

「それを何度もやってしまい、“どうせ今度はないんでしょ”と思わせてしまったらおしまい。大げさなことを言うと、どんなに期待しても実現しないんだ、夢を見ることは現実的じゃないんだ、と醒めた子になってしまうと思います。言えばなんとかなる、というのが習慣になると、言わなくても自分でやるようになっていくと思う。“これは親に言うより自分でやったほうがいいや”って、頭が回転する子になります。それには、やる前からどうせ向いてないとか、ダメに決まってる、今じゃなくてもいいというのではダメ。とにかくやってから判断することが大事で、やってダメだったり無理だったらひと呼吸おけばいいし、よければもっといっちゃえでいい。そういう、怖がらないで動く子になってほしいですね」

 また、家族が子どもに与える安心感は一生続くもの、と東儀さん。

「どんなに世の中がよくなっても、家族の結束がなければ居心地が悪くて、居どころがなくなる。宙に浮いていることほど寂しいことはない。そういう気持ちで子どもを包んであげたいですね。それから、これって子育ての本なんですが、子育てが終わった方、子どものいない方にも“家族ってなんだろう”ということを考えるきっかけになるといいなと。育ててくれた親のことを考えて、ご両親が健在なら親孝行してみようかな、と思ってもらえたらいいですね」

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『東儀家の子育て』1300円/講談社
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■取材後記「著者の素顔」

 '60〜'70年代のロックやアニメ、特撮番組が大好きというちっち君。最近ハマっているものはと伺うと、「手塚治虫です。もともと僕が好きで、ちっちも白黒アニメの『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』などを見ていたんですけど、そこからハマって、僕の本棚のマンガを読み始めたんです。家に人が来て“今、ちっち君は何が好き?”と聞くと『手塚治虫』って答えてますよ。そこで『妖怪ウォッチ』とか言わないところがイイぞ、って感じで(笑い)」

(取材・文/成田 全 撮影/齋藤週造)

〈著者プロフィール〉

とうぎ・ひでき ●雅楽演奏家。1959年、東京都生まれ。父親の仕事の関係で幼少期を海外で過ごす。高校卒業後に宮内庁楽部に入り、宮中や海外での演奏会に参加。'96年宮内庁を退職、同年『東儀秀樹』をリリースしデビュー。本の執筆や俳優としても活躍、また趣味人としても有名。イラストを担当した『白うさぎと天の音 雅楽のおはなし』が好評発売中。