20世紀から21世紀にかけて列島を揺るがした「大事件・事故・ブーム」のその後を追った大特集。今回はQちゃんの愛称で大人気になったあの人――

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「’09年6月のことです。石原都政下の東京都は’16年五輪に立候補し、国民的人気のQちゃんに招致応援ランナーを頼みました。国内世論を盛り上げるため都内を走ったんですが、あいにく土砂降りの雨に。それでもQちゃんは最後まで走り切り、一緒に走った市民と“いい思い出になりましたね~”とハイタッチで完走を喜んでいた。

 JOC(日本オリンピック委員会)理事になったQちゃんは’20年五輪招致活動にも駆り出され、現役引退後も、ずーっと五輪のために頑張り続けている。結婚もしないで。もう1個金メダルをあげてもいいくらい」

 と話すのは、元都庁詰め記者。

 Qちゃんの愛称で知られる高橋尚子さんの金メダルはカッコよかった。

 ’00年のシドニー五輪女子マラソン。18キロ地点で早くもスパートをかけ、26キロあたりからリディア・シモン選手(ルーマニア)とマッチレースに。34キロを過ぎると、かけていたサングラスを颯爽と投げ、シモン選手を一気に引き離して、そのままゴール。

 日本の女子陸上では史上初めての金メダリスト、おまけに五輪レコード(当時)でもあった。

「すごく楽しい42キロでした」

 と、Qちゃんスマイル。同年、女子スポーツ界初の国民栄誉賞を受賞した。

 翌’01年のベルリンマラソンでは、2時間19分46秒の世界新記録(当時)を打ち立てている。

 ’08年に引退を発表。申し分のない実績と誠実な人柄でテレビのスポーツキャスターや解説者などに引っ張りだこになった。先輩ランナーでマラソンや駅伝解説でおなじみの増田明美さんは、Qちゃんの多才ぶりに舌を巻く。

「彼女はアスリートとして肉体・精神の両面で強かっただけではなく、勝負師としての駆け引きも上手でした。なにしろ走ることが大好き。だから金メダリストに輝いたんですね。一緒に解説していると、走るときの心理状態など臨場感があふれていて、すごいなと感心させられます」

 ほかに、JICA(国際協力機構)のオフィシャルサポーター、中日新聞の客員、大阪学院大学特任教授、陸上教室の指導者、市民マラソン大会にもジョガーとして参加する。変わったところでは北海道の「Qちゃんファーム」。野菜などを作っていた。

「そのころは、私にじゃがいもやカボチャを送ってくれたんですね。とにかくチャレンジ精神が旺盛で、新しいものに次々と挑んでいくんです。金メダリストならではの活動もやっていましてね。金メダルに甘んじることなく、積極的に取り組んでいる。そこが素晴らしいですよ」(増田さん)

 例えば、シューズが買えないアフリカの子どもに日本から中古のシューズを送り、かわりに向こうの子どもが花の種を送り返すという親善・慈善プロジェクトなど。現役時代よりも、むしろ忙しいかもしれない。そうなると、婚期なども気になる─。

「いや、’20年東京五輪ぐらいまではどうですかね。彼女はとにかく明るくて、後輩の面倒見もいいし、優しいし、料理も上手ですから、素敵な女性。でも、結婚も、タイミングも、彼女自身が決めることですから。私は、人生の長距離走者として走り続けている彼女をずっと心から応援します」

 と増田さん。言葉の端々からQちゃんに対する愛情が感じられた。

 Qちゃんには素敵な彼氏がいる。’12年3月、かつて「チームQ」でトレーナーとしてサポートし、現在はマネジャーとして支える1歳年下の西村孔さんと、結婚を前提に交際していることを発表。

「頼りがいがあって安心できる人。金メダル以上の存在です」

 と、ノロケてみせた。

 それから3年。そろそろ結婚してもいいころ。無粋を承知で、Qちゃんが所属するスポーツマネジメント会社に聞くと、

「今もふたりは一緒に住んでいますし、順調にお付き合いしていますよ。彼女(Qちゃん)が言うには、2人とも面倒くさがり屋で、それでここまで来ちゃっているとか。東京オリンピックまでに結婚ですか? 本人も“本当にわかりません”と言っていました」

 わからない、ということは結婚が先かもしれない。プライベートが充実していることは間違いないだろう。そろそろ、ゴールシーンが見られるかも!?