1998年に急逝したhideがこの世に帰っていた。

 熱狂するファンの人々。泣いて、舞台上のhideを直視できない女性。ライブ会場はあっという間に熱い空気に包まれた。

 hideは「HIDE」としてX JAPANのギタリスト、さらにソロアーティストとして、第一線で活躍していた。X JAPAN(旧名:X)デビュー時のメンバーでは、最後に加入。ほとんどの楽曲をリーダーであるYOSHIKIが作詞・作曲するなか、アルバムの2〜3曲は作詞・作曲もこなしていた。

 X JAPANはいわずもがな、日本のヴィジアル系ロックバンドで、1989年にXとしてメジャーデビュー、LAメタルに大きく影響を受けた派手なルックスで国民的ロックバンドとして人気を呼んだ。ヴィジアル系の生みの親とも言われ、メイクやファッション、パフォーマンスで魅せることも得意だった。

 小泉純一郎元総理がファンだったことでも知られている。

 ヴィジアル系はよくわからないボクだって「Forever Love」「Tears」なんて曲は、カラオケで熱唱したこともある。

 リーダーのYOSHIKI、ボーカルのToshlなどと並んで、「HIDE」の人気はものすごいものだった。

 1992年にX JAPANと改名。1997年に一度、解散。

 しかし、解散した翌年、hideはこの世からいなくなった。

 いろいろなことがささやかれたが、葬儀の行われた築地本願寺に集まったファンは5万人とも言われている。

 そのhideが今、「DMM VR Theater」に帰ってきたのだ。

「おかえり〜〜hide!!」。ぽろぽろ涙を流しながら叫んでいる。

 舞台の上には最新の3DCGホログラフィックで作り出した映像のhideが踊りながら、歌っている。爆音の音響のなか、歌い上げている。

 はじめhideが現れたとき、亡霊がそこにいるのではないかとちょっと怖かった。映像なんだろうが、人間に見える。

 それぐらいの完成度なのだ。

 3Dといっても映画のように専用のめがねなどかけるわけではなく、舞台の上で本当の人間がライブをしているようにそこにいる。激しく熱い動き。表情さえも、普通の人間と変わらないぐらいなのだ。亡くなった人がそこにいる。

 不思議なことを体験している感覚。劇場にいる人々は縦ノリに体を揺らし、徐々にトランス状態に入っていく。会場は熱気を帯びてくる。ボクも物の数分でライブにのめりこんでいった。

 実際、立体的に見える映像を流しているのは、ステージ前の床にあるLEDビジョンだそう。3Dのホログラフィーと人間が一緒にステージに登場するなどもできるようになった。今後はホログラフィーと実際の人間のコラボで、コンサートや芝居も不可能でなくなったという。

 hideのホログラフィーの場合、顔の表情を再現するには、まず役者さんが演技でさまざまな表情をして、顔の表情筋の動きをキャプチャーする(取り込み・保存する)。それを、hideの3DCGの動きに合わせる。そのことで、人間の複雑な表情の変化を、ホログラフィーで自然に再現しているという。いままでのCGキャラクターとは、一味もふた味も違うはずだ。

 今回のVR Theaterの初公演に、この世にいないhideを選んだのは、「最初に一番、難しいことをやろうと思ったから」。そうプロジェクト責任者、DMMフューチャーワークス代表の黒田貴泰氏は言う。

「DMM VR Theater」には無限の可能性がある。

 まずは、帰ってきたhideに会いに行ってほしい。

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「hide crystal project presents RADIOSITY」

世界初の3DCGホログラフィックエンタテイメント常設劇場「DMM VR Theater」(神奈川県横浜市西区南幸2-1-5:横浜駅より徒歩5分)のこけら落とし公演として、9月11日からプロローグ公演が開催されており、10月には待望の本公演がスタートする予定だ。料金は5000円(税込) +1ドリンク制(500円)。今回の公演は9月27日まで。詳細はhttp://www.dmm.com/hide_radiosity/index.html

〈筆者プロフィール〉

神足裕司(こうたり・ゆうじ) ●1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。Twitterアカウントは@kohtari