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 16歳で芸能界入りし、19歳のとき芸名を「志垣太郎」に変更、NHK時代劇『男は度胸』や大河ドラマ『新・平家物語』での源義経役で、アイドル的な人気を集めていた。

「主役のイメージに合わない、という人が多かったなかで、花登(筺)先生の一存で決まったんです」

 そんなイメージを払拭する作品が、25歳で出会った『あかんたれ』の主役だった。

 『細うで繁盛記』『どてらい男』で知られる人気脚本家・花登筺の新作。大阪の商家を舞台に、愛人の子・秀松が辛抱を重ねながら奮闘する一代記ドラマは、好評を博し、予定の放送回数を大幅に超え、最多放送回数となる210回に。

「最初は80数本だったのが、話も視聴率もよかったこともあって、延長することになり、いったいいつ終わるのかわからない状態で続いていました。そんなとき、当初予定の後続ドラマが放送延期されることになって、制作関係者が(テレビ局に)抗議する事態が起きて一端、中止することにしたんです」

 不完全な結末もあって、視聴者からは続編を熱望する声が寄せられ、『続・あかんたれ』が放送されて、人気は再燃した。

 そんな中、ドラマと並行して、『あかんたれ』の舞台公演も行うハードスケジュールに。

「収録を終えて、東京公演の夜の部の舞台に上がり、名古屋、大阪公演では東京と行き来して、もう大変でした(笑い)」

 公演パンフレットに、ハンカチがつくほど泣かずにはいられない作品は、女性だけでなく男性にも支持された。

「主人公の商売に対するひたむきさに、中小企業の社長さんやタクシー運転手の方が共感してくれたようです。昼時になると、テレビのある食堂がいっぱいになったと聞きました」

 ドラマが終わって40年近くなるが、国内での再放送や海外でも放送され、長く愛された作品と実感する。

「(続編と合わせて)365本放送された作品に主演できたというのは誇りに思います。アイドル路線から役者としてのイメージが変わり、僕にとっては記念碑のような作品です」