1964年5月4日から始まり、半世紀以上の歴史を誇った東海テレビの昼ドラが、ついにその幕を閉じる。輝かしい歴史と変遷、そして昼ドラへの思いについて、最後の昼ドラを担当する市野直親プロデューサーに聞いた。
東海テレビの昼ドラには、独特の濃厚さがある。
「僕が初めてプロデュースした『新・愛の嵐』の台本に“私の靴を舐めなさい”というセリフがあったんですね。でもそれってどうなのかな、と思ってセリフを直そうと思ったら、年上のスタッフの方に叱られたんです。それをどう表現するのか、それでこそ昼ドラだ、と」
スタッフにはあるキャッチフレーズがあるという。
「僕らには“そこまでやるか東海テレビ”というキャッチフレーズがあるんですが、作る側にこの気持ちがないとお客さんのご期待にそえないので、いつもそこは意識して作っていますね」
制限がないのが、昼ドラの魅力だと語る。
「僕は昼ドラって“なんでもあり”だと思っているんです。脚本家の方に話の内容を“こうしてください”と制限してしまうと、みんなが見てみたい世界が生まれない。でも描いている根っこはどの作品も同じで、それは人間をしっかり描くということなんです」
根本は変わらないそうだ。
「しかも全部で約60回、最近だと40回くらいですが、放送時間が長いので、主人公だけではなく周りの登場人物の人生までも描ける。それが激しいか穏やかか、ドロドロかホクホクかというだけで、愛憎でも親子関係でも、人間と人間のぶつかり合いがある。
長く続くためには変わり続けることが必要でそれもあって、さまざまな作品が作られましたが、描きたい根っこの部分はずっと変えていないんです」
熱心な視聴者に怒られることも。
「物語が後半になってロケへ行くと、見に来た視聴者の方に出演者が怒られたりするんですよ。“あんたがあんなことしなければよかったんだよ”とか言われるそうです。なので、この後はこうなりますからと説明すると“そうか、だったらいいよ”と納得してもらえたりするとか(笑い)。
でもそこまで入り込んで、ハマって見てもらえる。毎日見だすと止まらないのが、昼ドラの魅力ですね。スタッフ全員で“これが昼ドラの最後だ!”と踏ん張って作っています」
3月の昼ドラ終了後、4月からは土曜夜に1時間ドラマがスタートする。
「昼に毎日ドラマを楽しめるのはこれで最後。絶対に見る人の思いを裏切らないものにしたいですね」