■きょうだいゲンカになると年長の子どもを責めてしまう

 年の近いきょうだいがいると、ケンカはしょっちゅう起こるもの。そんなとき、上の子どもだけを叱ったり、一方的に“やめなさい!”と怒鳴ったりして、ケンカに介入する母親も多いはず。だが、原田さんはケガや被害がなければ、介入せずに静観するのもひとつの手だという。

「子どもはケンカをすることで、母親の注目を得たいと思っているケースが多いです。子どもたちが“ケンカしてもお母さんはかまってくれない”と自覚すれば、それ以降ケンカしなくなることもあります。

 それでもおさまらないようなら介入しますが、そのときでも“どちらが正しいか”をジャッジするのではなく、ひたすら話を聞くようにしてください。

 無理やり仲直りさせたり、正義を振りかざしたりするのではなく、“どうして叩いたの? 何か理由があったんでしょ?”“何が嫌だったの?”“叩かれて痛かったね”など、子どもたちに寄り添って共感の言葉を投げかけるようにしましょう」

<BEFORE>

「お兄ちゃんなんだから、やさしくしなさい!」

「なんで仲よくできないの!?」

<AFTER>

「ぶつことはよくないよ。でも何があったの? 聞かせてくれる?」

「順番に話を聞かせてくれる?」

■親に依存しない自立した子どもに

 母親として子どもの成長を願うあまり、あれこれと口出し。すると、かえって子どものやる気と自信が失われてしまう。とはいえ、ふだんの生活や勉強、人間関係において子どもに問題があれば、少しでも手助けしてあげたいと思うのが母親のホンネだが……。

 子どもへの“言葉がけ”で気をつけるべきポイントは?

「今回は3つのケースをご紹介しましたが、大前提として『横の関係』で子どもと接することが大事です。

 上から目線の命令口調で指示されると、大人でもやる気がなくなりますよね。“もし自分が夫や上司、親に“ダメ! ダメ!”と言われ続けたらと想像してみてください。誰もが反発したくなるものでしょう。

 “ダメ!”“いけません!”などの禁止語や命令語もなるべく使わないほうがよいです」

 例えば、このように言葉がけを変えてみてほしい。

×そんな言葉づかいをしたらダメでしょ!

〇きれいな言葉を使おうね。お母さんはこういったほうがいいと思うよ。

「“ダメ!”と否定する表現がないだけで子どもの拒絶反応も少なくなり、言われたことを素直に守ってくれるようになるかもしれません」

 問題が起きたときに、親子で話し合うのもアドラー的解決法であるという。

「アドラー心理学では親子で民主的に話し合いをすることを重視しています。そのためにも、前述したとおり、親子が対等な『横の関係』でなければなりません。親子に上下関係(『縦の関係』)があると、子どもは萎縮して自由に意見を言えません。

 例えば、子どもがゲームばかりしているとき、無理やり取り上げるのではなく、子どもと話し合ってゲームをする時間を決めます。ルールを破ったとしても、罰を与えるのではなく、また話し合ってルールを再検討すればいいのです」

 子どもがこうした経験を積むと、常に自分で考える習慣ができる。いろいろな問題に直面したとき、自力で解決できる能力が身につくのだ。

取材・文/田中 潤 イラスト/シライ カズアキ