「衆議院が任期満了すると総選挙を行いますが、その直前に大災害が発生した場合、被災地では選挙ができず衆院議員を選べないことから政治の空白が生じてしまう。だから議員の任期延長ができるよう、憲法を変えるべきだとの議論が持ち上がっています」

 だが、実際に衆院で任期満了による選挙が行われたのは、戦後にわずか1回だけ。任期をまっとうする前に、ほぼ毎回、解散総選挙に至るからだ。

■憲法を変えてどんな国になるのか

 ほかにも隣接する自治体を合わせてひとつの選挙区とする「合区」の解消(自民)、教育無償化(お維新)など、さまざまな憲法改正案が飛び交っている。

「合区を解消すべきとの国民的機運が高まっているとは言えず、教育無償化は憲法を変えなくても法律レベルで対応可能。変えることが自己目的化しています」(太田弁護士)

 憲法は国の形を表すもの。もし参院選で改憲勢力が3分の2を占めたら日本という国のあり方が変わる。

「憲法を変えてどんな国になるのか考えるとき、'12年に自民党が発表した『自民党憲法改正草案』にヒントが。このまま使うわけではないと自民党議員は言いますが、その憲法観は参考にできる。

 前述した緊急事態条項はすでにありますし、権力者を縛るものだった憲法は国民が守るべき義務に変わり、前文も“国民”ではなく“国”になるなど、いまの憲法から様変わりしています」

 女性の暮らしや生き方にも影響が及ぶ。

「24条に“家族は互いに助け合わなければならない”という条文があります。これは介護やDVなどの家族問題を解決する目的ではなく、個人がわがままを言うから家族がうまくいかないという考えを背景に作られたもの。社会保障をあてにするな、貧乏人同士で助け合えということで結局、女性に負担がのしかかります」

 では、野党が改憲勢力を抑えられた場合はどうか?

「安保関連法の運用にあたり、任務などを実施する際のハードルが高くなるのではないか。例えば、南スーダンPKOで検討されている駆けつけ警護をやるにしても、直近の国政選挙で野党の得票数が多かったとなれば、慎重になる可能性はあります」(半田さん)

※週刊女性2016年7月5日号掲載の記事を一部再編集しています。