本物の職人みたいに見事な手さばき

 プライベートでは、昼と夜の1日2食で、嫌いな食べ物は一切なし。ただ、この30年間に好みは変わって、以前は肉を中心にこってり系が好きだったが、年齢とともにあっさりしたものを好むように。ぬか漬けや塩辛に目がないそうだ。

最近はお酒が飲めなくなって、甘いものに目覚めつつあります。なかでも、あずきが好きで羊かんやもなか、鯛焼き、あずきアイスもいいですね。あとアイスキャンディーの『ガリガリ君』はおいしいですよ。エッセイでもコーンスープ味を取り上げました」

 近ごろは、料理は電子レンジを活用して簡単にすませることも増えたが、10年ほど前までは寿司をにぎるのが趣味だったとか!?

「寿司屋で教えてもらったり、職人向けの教科書をボロボロになるまで読み込んで覚えたんです。合羽橋で買ったガラス製の小さなショーケースと前日に下ごしらえしたネタを持って、あちらこちらに出かけて寿司パーティーを開きました。もちろん白衣と帽子もそろえ、寿司職人の格好で行きます」

 寿司をにぎる仕草を少し見せてもらったが、本物の職人みたいに見事な手さばき! 東海林さんは趣味にも仕事にも全力投球なのだ。

長期連載の掛け持ちは遅刻ゼロの努力の証?

『シウマイの丸かじり』(朝日新聞社刊)。あるデパートの駅弁大会。牛肉弁当の到着を待っていたが、なぜか手にしてしまったのはシウマイ弁当で……。丸かじりシリーズとしては39冊目
『シウマイの丸かじり』(朝日新聞社刊)。あるデパートの駅弁大会。牛肉弁当の到着を待っていたが、なぜか手にしてしまったのはシウマイ弁当で……。丸かじりシリーズとしては39冊目
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 現在、マンガとエッセイを合わせた連載数は、週刊誌3本と月刊誌1本

 この中で、もっとも連載期間が短いのが『あれも食いたい これも食いたい』だが、それでも30年続いている

 東海林さんほど長期連載を多く持つ作家は、ほかにいないのでは?

やめてくれって言われないから、続けてるんです仕事は毎日11時ごろから始めて19時ぐらいに終わる。サラリーマンと同じで、ほぼ決まった時間で働いてます。残業はなし。締め切りに遅れたことは1度もないです。誰にも表彰してもらったことはないけど(笑)。焦るのがイヤなんですよ。時間が迫ってきて慌てて書くことになって、編集者が半狂乱で待っているなんて場面は避けたい。仕事は楽しくやりたいですから、そのための努力です。好きで始めた商売ですから、つらいことはないですね。食べ物のことを書いていても楽しいですよ」

 そんな楽しさが、そのまま読者に伝わってくるからこそのロングセラーだ。

多少早い、遅いはあっても、誰だって年がいくにしたがっておじいさん、おばあさんになって才能が枯れてくる(笑)。いずれ“もうやめてくれ”と言われるまで頑張りますよ

<Profile>
しょうじ・さだお マンガ家、エッセイスト。1967年に『新漫画文学全集』で連載デビュー。1974~2014年にかけて毎日新聞朝刊に描いた4コママンガ『アサッテ君』は、一般全国紙の最多掲載記録となった。ほかに『週刊文春』の『タンマ君』、『週刊現代』の『サラリーマン専科』など長期連載を複数抱える。紫綬褒章、旭日小綬章受章。