歯止めがかからない、やりがい搾取の構造

 もっと部活がうまくなりたい。今は難しいことでも練習して、できるようになりたい─、そう努力する生徒の頑張りは素晴らしく、その向上心に応える教員の献身も素晴らしい。

「いいことずくめだからこそ、誰も歯止めをかけられないのです」

 そう指摘するのは、現役教員の青木博司さん(仮名)だ。

「責任感から熱心に取り組んで身体を壊した先生もいますし土、日も部活で不在がちになり、家庭が壊れた先生も少なくありません」

 今年4月、青木さんはツイッターをきっかけに知り合った教員、その家族らと一緒に教育現場を改善するために部活のあり方を考える『部活改革ネットワーク』を設立した。メンバーは全国におよそ50人。ネットを介して地域ごとに集まり、勉強会や情報交換の「オフ会」を開いている。

「部活はあって当たり前、絶対にやらなければならない仕事だと思っていましたが、実は違う。教員の本業は授業です。部活は教育課程に入っていないのに、顧問をすることが実質的に強制されている状態。しかもそのことを知らない教員がほとんどです」

 公立中学の場合、勤務時間外に行う部活の顧問は職務として命じられないとする裁判の判例もある。

 しかし、現実には校長に「お願い」されて断れる教員はまずいない。

「“他人の子どもの面倒はみるけれど自分の子どもはみられない”とは教員の誰もが実感する言葉。それに先生がヘトヘトなら、生徒だってクタクタです。授業に部活に、塾にも行って。いつ家族と過ごすのか」

 こうした負担を軽減させようと、文科省は、学校の教員ではない外部コーチが部活の指導や試合などの引率を行う『部活動指導員』を4月から制度化。これに関連して、自民党は部活指導者の国家資格を創設する検討を始めている。

「部活指導員は国の予算がついていないため自治体の負担になる。それでは制度ができても進まない。外部コーチが教育現場を理解している人かどうかという問題もあります」

 と内田准教授。先生の負担が増えるということは、子どもに向き合う時間が減るということでもある。

「例えば、部活が週6日あるところを3日に減らす、サッカーのように地域の民間クラブチームへ移して学校から切り離すなど、部活のあり方そのものを検討すべきです」(内田准教授)

取材・文/千羽ひとみと週刊女性「教育」取材班