幼なじみの初出産祝いにN子さんが手作りした育児バッグ。初心者マークが愛らしい
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「ずいぶんタイミングよく遺体が見つかった。立ち退きに同意して解体作業が始まれば遺体は見つかるし、1軒だけ反対すれば不審に思われる」

 と地元の男性は話す。

 一部住民はモヤモヤした疑念を抱いている。

 N子さんと長男は1度は実家を出て独立生計を立てていた。父親の病死後、母親と次女の2人で暮らしていた。しかし、N子さんは離婚して実家に出戻り、長男も仕事を辞めて戻ってきた。N子さんと長男は働く様子がなく、母親の病死後は次女の稼ぎが頼りだった。

「お母さんが亡くなったとき、ご自宅にお線香をあげに行ったら、妹さん(次女)は“お兄ちゃんとお姉ちゃんの分まで食費も生活費も大変なのよ”と言っていました。

 仕事から帰ると、2人ともバツが悪いのか、バーッと2階に上がっちゃうんだって。妹さんは本当によく頑張っています」(別の70代女性)

 次女はほとんど1階の板の間で過ごし、N子さんが大騒ぎした後は近所を1軒ずつ回り、泣きながら「すいません」と謝ったという。路上で転倒した高齢女性を助け、救急車を呼んだこともある。

 これほど評判のいい女性がなぜ身内の死に長期間、気づかなかったのか。築57年の古いタイプの家で姉の部屋は鍵がかからない。生活空間が別でも2階で物音がしなくなれば様子を見に行くのが普通だろう。帰宅時に話を聞いた。

─週刊女性です。お姉さんとはどれくらい会っていなかったんですか?

「あ、はい。すいません。そういうのは対応しないのでごめんなさい」

─普段から会話がなかったんでしょうか?

「すいません。ごめんなさい」

 どんな質問にもそう繰り返し、自宅に入ってしまった。子どものころは幸せな5人家族だった。職人肌の父親の運転で七福神巡りのドライブをしたり近くの上野動物園へ行ったり。3きょうだいはそろっておとなしい性格だった。N子さんとお互いの家をよく行き来して遊んだという幼なじみの50代女性が振り返る。

「小学生のとき、リカちゃん人形やおままごとで遊びました。Nちゃんの家に行くと“いらっしゃい”と母親がクッキーやカルピスを出してくれて。Nちゃんは親におもちゃをねだる子ではなく、甘えん坊だった妹さんの面倒もよく見ていました」

 別々の中学に進み疎遠になったが、10数年たったある日、N子さんが突然、自宅を訪ねてきてくれたという。

「私が子どもを産んだことを知り、手作りの育児バッグを持ってきてくれたんです。Nちゃんは小平市の農家の息子さんと結婚し、市営住宅で拾った猫5、6匹と暮らしていました。慎ましやかな生活でしたが、楽しそうでした。どうしてこんなことに……」

 と言葉を詰まらせた。

 もし、家族の衰弱や死亡に気づきながら対処しなかったとしたら、どうなるのか。

 刑事法に詳しい甲南大学法科大学院の園田寿教授は、「同居する家族が衰弱していった場合、それに気づきながら放置すると保護責任者遺棄罪が成立する可能性があります。死んでしまうと保護責任者遺棄致死罪になる。年下のきょうだいでも保護責任者になります。ただし、衰弱に気づかなかった場合は罪に問われません」と説明する。

 死んでいた場合は……。

「自分のテリトリーの中で死体を見つけて警察官に申告しないと軽犯罪法に触れます。上限は30日未満の拘留もしくは1万円未満の罰金。ただちに通報していれば法には触れません」(園田教授)

 N子さんの死を悼む幼なじみがいた。小学校時代の写真(※)を見て“遺体はNちゃんだったのか”と気づく旧友もいるかもしれない。

※補足:この記事は『週刊女性』本誌に掲載した記事を転載したものです。「最後の文章がわかりにくい」というご指摘がありましたが、本誌の記事ではN子さんの小学校時代の写真を掲載しているため、このような表現になっています。(2017年6月1日16:00更新)