お笑い第7世代と呼ばれる芸人たちの活躍が続いている。霜降り明星やEXITといった面々は日々テレビに登場し、YouTubeなどでの活動も積極的だ。最近は若手芸人の中でも3時のヒロインやぼる塾といった女性たちに目が向けられ、第7世代のムーブメントが改めて盛り上がっているようにも見える。
そんな中、再び注目されているのが第7世代の少し上の世代の芸人たちだ。彼ら・彼女らはいつの間にか、「6.5世代」と呼ばれるようになった。そして、そんな6.5世代の芸人を象徴するのが、パンサーの向井慧である。
“アイドル芸人”としての苦悩
現在はトリオのツッコミ役として活躍する向井だが、彼はもともとボケ役だった。
NSC東京校に入学したのは2005年。幼なじみと一緒に「あじさい公園」というコンビを組んだ。しかし、向井はそこで、シソンヌや当時まだピン芸人だったチョコレートプラネットの2人といった同期の存在に衝撃を受ける。それまで「公式に当てはめて、“こんなん面白いかな”みたいなネタを作ってた」という彼は、悟ったのだという。
「俺の頭だけで考えたボケじゃ通用しないって、初めて思った」(『アメトーーク!』テレビ朝日系、2020年11月12日)
その後、ツッコミに転向した向井は2008年に尾形貴弘、菅良太郎とともにパンサーを結成。最初に彼らがテレビで注目されたのはファンの多さだった。当時、ライブを終えると劇場の外には出待ちのファンが長蛇の列を成していたという。特に、向井はその甘いマスクでパンサーの人気を引き上げた。2015年には吉本興業の「男前ランキング」で1位を獲得。イケメン芸人の筆頭格として注目された。
ただ、「出待ち率ナンバーワン」という触れ込みでテレビに出演していた当時、“面白い”ではなく“イケメン”として頭角を現した自分たちに対する番組スタッフの冷ややかな目を、向井は敏感に感じ取っていた。彼は振り返る。
「打ち合わせのときにディレクターさんが、『ちょっと今回の収録、NON STYLEの井上さんみたいな感じで、男前だねって言われたら全部、そうなんですよねとか、モテるんですよって言ってください』って言われたときに、は? どういう意味? 人格変えさせられんの?って思って」(『あちこちオードリー~春日の店あいてますよ?~』テレビ東京系、2020年8月18日)
ボケからツッコミへの転向を経て、向井はアイドル的な人気を背にテレビに出始めた。順調に見える芸人人生の始まり。しかし、そこに待っていたのは“アイドル芸人”としての苦悩だった。