子どもの歯は、母親の影響が大きい
子どもの歯は、母親の影響が大きい
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「母親の学歴が高いほど子どもの虫歯の発症率は低い。同種の調査結果は他からも出ています。発症率の高低が逆転している年齢層があるのは、子どもの虫歯に気づかないなど治療を受けさせていない家庭がカウントされないからと考えられます」

 と相田准教授は指摘し、母親の影響力について説明する。

学歴の高い母親の場合、虫歯の発症率が低いのはきちんとケアをしているから。母親の学歴が低い家庭では、子どもの虫歯をそれほど重要視していないと推測できます。病院に連れて行くのも母親が多いでしょうし、それだけ母親の影響というのは大きいということですね」

 放置された虫歯は自然治癒せず悪化の一途。

 “放置虫歯”対策で成果を出している自治体がある。

 東京・足立区。23区中、虫歯のある子どもの割合が23位とワーストだった。

『同区衛生部こころとからだの健康づくり課』の馬場優子課長が話す。

「3歳児までは母子健康法に基づき歯の健診があります。小学校に入ると、学校保護安全法で健診が受けられる。ところが4歳から6歳児までは健診がないんです」

 と法律から漏れているエアポケットを指摘。

「区の保育園や幼稚園などでは行っていたのですが、私立の幼稚園などでは行っていないところもありましたし、未通園の子はカバーできていませんでした」(馬場課長)

 そこで同区は、こんな一手を打ち出した。

「子どもの虫歯を減らすために全員が無料で受けられる“あだちっ子歯科健診”を2014年度から開始しました」

 結果は如実で、小学1年生の虫歯の子の割合が2年間で6%も減少。ただ未通園の子どもの受診率は著しく低く、

「保育園に通っていれば自動的に受診することになりますが、未通園の子の場合は、親御さんが歯医者さんに連れて行かなければならないのでハードルが高く、受診率が著しく低いんです。そこで健診の通知にアンケートを同封し、歯科医院に連れていけないと回答した方々に理由を聞いたところ時間がないという回答が圧倒的でした」(馬場課長)

 相田准教授が指摘するように、時間的・経済的に生活に余裕がないことで子どもの健康に影響が出ている。