「痛! コイツ背中からパクッて……マジかよ(笑)」

 大きなくちばしのペリカンにいたずらをされた若い男性客が声をあげてはしゃいでいる。その横では、カンガルーに飛びつかれた女性がたじたじ……。

 “日本一危険な動物園”がある。そんなウワサを聞きつけ記者が訪れたのは、札幌市内の山中にあるノースサファリサッポロ。

 屋外の広場でさっそく放し飼いの動物たちが出迎えてくれた。ごろんと無防備な姿で日向ぼっこをするカンガルーや近距離を走り回るワラビー、同じ敷地内でペリカンも負けじと羽を伸ばす。動物がわがもの顔で過ごす空間に、客が「おじゃましま~す……」と言わんばかりに足を踏み入れる。ちょっと不安になるほどの開放感が漂う園内は、子連れの客より大人同士で楽しむ客の姿が目立つ。

広場でカンガルーやワラビー、ペリカンが自由に動き回る

「コンセプトは動物と人の距離がゼロであること」

 そう話すのは社長の星野和生さん。前職はなんと建設業。定山渓(じょうざんけい)温泉の近くにあったクマ牧場が閉園したのを機に、知人ら4人で動物園を完成させたという。

 現在、120種前後いる飼育動物にスタッフは朝、餌をあげない。空腹状態の動物に客が有料で餌やりをするためだ。

「動物に触ってみたい、餌をあげたいという人に感動してもらいたくて。もちろん、民営だから餌代を少しでもお客さんに負担してもらいたい事情もあります」

 2万円分の餌を購入するファンや、東京から年5回も訪れるリピーターもいて、めったにできない体験へのニーズがうかがえる。

恐怖のトラとの触れ合い体験

 この日、最も園内が盛り上がったのは星野さん同伴でトラ舎に入るイベント。短い鎖でつながれているとはいえウォーと鳴き続けるトラと同じ檻の中に入ると、あまりの恐怖に緊張が走る。

「やばい、やばい……」と騒ぐ客をよそに社長は猛獣との信頼関係を見せつけた。

「ティガー、ティガー! いい子だ、よし、お手!」

 まるで猫のように猛獣と触れ合う姿に歓声が沸く。大人たちは、みな大興奮!

 “落ちたら死にます”と看板を掲げた『デンジャラスゾーン』では、ワニやピラニアなどが待ち受ける。ワニの池の上に設置された細い橋の手すりはロープのみ。足を踏みはずせば落ちてしまいそうだ。客はこのゾーンの入り口で自己責任を了承する誓約書に署名するが、みんな細心の注意を払うため、ここでの事故はゼロ。

ワニを抱く体験も、飼育員監視のもとで行われていた

 だが、安全性について非難する専門家もいる。

「カンガルーに餌をねだられて尻餅をついた、うさぎや亀に噛まれたなど苦情はありますよ。生き物ですから触る以上リスクはある。襲ってくる動物は放し飼いにしないし、人に慣れるようにスタッフが小さいうちから飼育努力しています

 日本一危険な動物園と謳(うた)うのは「お客さんが無茶しないため」と星野さん。

「園内には動物が持つパワーの程度を注意書きした看板を置いています。あとはお客さんの遊び方の問題。無理やり抱き上げれば動物も驚いて噛みますよ」

 以前、ナマケモノにハグをして顔が血だらけになった女性がいたという。

「動物管理者の責任がありますから治療はします。でも、年間数パーセントの遊び方が悪い客に合わせて、市営のように堅苦しくするなら動物園なんてやらないほうがいいと思っています」

【ノースサファリサッポロ】
住所●北海道札幌市南区豊滝469-1
入園料●大人(中学生以上)1500円、小人(小学生以下)500円、3歳以下無料
開園時間●平日9:00~17:00(最終入園16:00)土・日・祝日9:00~18:00(最終入園17:00)※7月22日~8月31日の営業時間・詳細はHP