我孫子市の遺棄現場には今もお供え物が。お地蔵さまも見守っている

「行きずりの犯行ではなく、顔見知りで保護者会会長の犯行だったショックは大きい」

 と松戸市教育委員会の担当者は振り返る。

 今年3月24日、千葉県松戸市の小学校3年生でベトナム国籍のレェ・ティ・ニャット・リンちゃん(当時9)が行方不明となり、2日後に同県我孫子市の農業用水路脇の草むらで遺体となって発見された。

 約3週間後、県警が遺留品のDNA鑑定や防犯カメラの映像などから逮捕したのは、リンちゃん宅からわずか300メートルほどのところに住んでいた渋谷恭正被告(46=殺人、わいせつ目的誘拐、強制わいせつ致死、死体遺棄で起訴ずみ)だった。

 同被告は取り調べに黙秘を貫き、事件は4か月以上たっても全容解明されていない。

 逮捕当初、リンちゃんの父親は渋谷被告について「面会して話したい」と公言していたが、何も明かさない被告に堪忍袋の緒が切れたようだ。

「裁判所に提出するため“渋谷被告を死刑にしてください”という署名を保護者から募っています。リンちゃん1人を殺しただけでは死刑にならないことは百も承知で、その前例を覆したいという思いでね」(保護者会関係者)

 リンちゃん宅を訪ねると、雨戸を閉め切った状態でインターホンを押しても応答なし。近隣住民が説明する。

「100日法要を母国であげるというので、6月末からご両親と弟さんの3人で帰国したままなんです。でも、近所の親しい知人に鍵を預けていて、毎日、リンちゃんの仏前にお水やご飯などお供え物をあげてもらっているみたい」

 近所の40代女性は、

「リンちゃんはこの地域で愛されている。親御さんが帰国中でも、祈りを捧げる人はたくさんいる。新盆の迎え火をしてくれる人は多いはずだから心配いらない」と話す。

 リンちゃんの同級生は寂しい夏休みを迎えた。

「ときどき、“リンちゃんってどんな顔だったっけ?”と私に尋ねてくる。一緒に撮った写真がたくさんあるので、それを見て“あっ、リンちゃんだ”などと言って思い出しています」(同級生の母親)

子どもの歯はボロボロ

 一方、渋谷被告の子どもの処遇を心配する声もある。同被告の2人の子どもはリンちゃんと同じ小学校に通い、父親の逮捕後は登校していない。残虐な犯行は許せないが、被告の子どもに罪はない。

 同被告は駅前の4階建てマンションの大家で家賃収入だけで生活していた。毎日のように子どもたちの登校を見守ったあとは仕事もせずにプラプラしていた。2度結婚に失敗し、内縁の妻だった中国人女性とは事件前に別れている。父親としての子育てはどうだったのか? 保護者会の母親が証言する。

「お子さんが保育園のときからジャンクフードを食べさせてばかり。栄養面なんて考えていないので、お子さんは乳歯のころから歯がずっとボロボロでした」

 ある商店街の店主も、コンビニでお菓子を買い与える姿をよく目撃したという。

「そりゃ子どもは喜ぶだろうけど、お菓子でお腹をいっぱいにするのは健康上よくないよね」と同店主。

 渋谷家の事情に詳しい住民男性によると、身寄りのない子ども2人は、離婚した実母に引き取られることもなく施設に預けられたという。

「まだ小学校に籍はあるので長期欠席が続いている状態です。夏休みが明けるころ、どこかの小学校へ転校する形になる」と学校関係者。

 初公判の期日は未定。被告は法廷で何を語るのか。