JR総武線御茶ノ水駅で3月13日、痴漢と名指しされた男性が駅ホームから線路に飛び降り、逃走する事件が起きた。首都圏で類似事案が少なくとも15件立て続けに発生。逃走中に電車に轢かれ死亡する事故もあり、深刻な社会問題となっている。

 再発防止策として期待されるのは、ホームドアと防犯カメラ設置を進めることだろう。鉄道会社の取り組みを聞いた。

「2019年度までにはホームドアをつけたいと考えております。各駅に何かしらバリアーをつけようと。車内の防犯カメラも'20年に向けて全車両に設置しようと思っております」(東急電鉄)

「駅、車内で注意喚起の放送をしています。痴漢や線路立ち入りが発生した際は警察と協力して巡回の警備を強化し、'20年春までに山手線の新型車両すべてに防犯カメラを設置する予定です。車内防犯カメラは痴漢も含め犯罪や迷惑行為の防止に役立つと思います」(JR東日本)

 両社とも痴漢対策としてだけではなく、広く駅ホームの安全確保や快適な車内を保つための対策という。

プライバシーの心配

 防犯カメラが全車両につくことを乗客はどう思うか。女性に絞って話を聞いた。

「エレベーター内のカメラも昔はなかった。けれども今では当たり前のようについている。最初は抵抗あるかもしれないけど、いずれ慣れると思います」(23歳女性)

 反対意見は少なかった。だが、慎重な意見もある。

「防犯カメラの設置についてはいいと思います。でも、満員電車で発生するトラブルは、防犯カメラでわかるのかは疑問ですね」(別の23歳女性)

 プライバシー面を心配する声もあった。

「つけるのはいいけれど、顔がバッチリ映って記録として残るなら、プライバシーにもかかわる。鉄道会社は運用・管理を徹底してほしい」(52歳女性)

 JR渋谷駅で5月29日、痴漢騒ぎがあった。目撃した女性に話を聞くと、

「女子高生が男性の胸ぐらをつかみ“お前だろ!”と突っかかっていた。一方、男性は服が破れた状態で“やってねぇよ! お前なんか触らねぇよ!”と言ってました」

 その後、男性は改札を飛び越えて逃げ、女性はその場で泣き出したという。

 さて、飛び降り逃走事案はその後どうなったのか。4月25日にJR埼京線板橋駅で痴漢した41歳の男が線路に逃走した事件では、すでに判決が下されている。裁判では、「線路に下りるニュースを見て自分もやった」などと犯行を認め、東京地裁は懲役6か月、保護観察つき執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。

板橋駅の周囲は開けていて、柵を越えると住宅街
板橋駅の周囲は開けていて、柵を越えると住宅街

 自宅周辺で男の近況について聞き込みをしたところ「そういえば最近見かけませんね」(コンビニ店員)。どうやら引っ越した可能性が高かった。

 5月15日に東急田園都市線青葉台駅で、痴漢の疑いをかけられた男性が線路に飛び降り、中央林間行きの普通電車にはねられた。男性の身元は発表されておらず、実際に痴漢をしたかどうかや、遺族らが同駅を訪れたかどうかはわからなかった。

「ホームなどに花をたむけた様子はない」(同駅関係者)という。