二級河川はどこでもあふれる可能性が

 地球温暖化が及ぼす影響は多発する大雨ばかりではない。河田教授によれば、温暖化の進行で、台風やハリケーン、サイクロンが強大化する傾向が世界規模でみられるそうだ。

 下の表は、気象庁のアメダスによる5年ごとの雨量観測データ。

アメダスによる1時間の観測データ数(気象庁データより河田教授が作成)
アメダスによる1時間の観測データ数(気象庁データより河田教授が作成)
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「この統計を見ると、日本の観測雨量は長期的な増加傾向にあることがわかります。激しい雨ほど降りやすくなっています。極端に言えば、従来の統計解析はもはや破綻しているということ。“〇年に1度の大雨”というとらえ方は、もう過去のものだと考えるべきなんです」

 雨量が増しているだけでなく、その降り方にも変化が。例えば、’15年の鬼怒川の堤防決壊。

「この水害は、今までにない気象条件で発生しました。2つの台風と偏西風の影響で、幅100キロにわたる線状降水帯が関東に出現し、鬼怒川の下流部に大雨を降らせました。ところが、上流にある4つのダムは、70%の貯水率にしか達していませんでした。従来の降り方であれば、堤防決壊は起きなかったでしょう。同じような大雨が、一級河川の鬼怒川よりも小さな河川の流域で降れば、必ず洪水氾濫は起こるといわれています。つまり、都道府県が管理する二級河川はどこでもあふれうるわけです

 そもそも高度経済成長に伴う都市化により、洪水の危険度は増した。

「1965年ごろ、大都市の宅地面積は農地面積を上回りました。丘陵地や田畑にも家が建ち、道路も舗装されたために雨が地中に浸透しにくくなり、流域に降った雨がすぐに川に流れ込むようになりました。洪水の最大流量に早く到達するようになったんです」

 もはや、日本のどこに住んでいようとも、水害と無縁である保証はない。

「阪神・淡路大震災や東日本大震災などを目の当たりにしてきた私たちは、地震が起きたらどんな被害が出るかを知っていますし、備えや心構えもあります。一方、1000人以上が亡くなる水害は、1959年に発生した伊勢湾台風から経験していません。そのため“水害は自分には無関係”と考えるほうが普通かもしれませんが、普通のままでいたら自分や家族が命を落とすことになる。水害は日本全国、まんべんなく起こると断言できますから」

<解説してくれた人>

◎蓬莱大介さん
気象予報士、防災士。『情報ライブ ミヤネ屋』で気象情報を担当。著書に『気象予報士・蓬莱さんのへぇ~がいっぱい! クレヨン天気ずかん』(主婦と生活社刊)

◎河田惠昭さん
関西大学社会安全学部社会安全研究センター長・教授。日本自然災害学会会長などを歴任してきた防災・減災研究の第一人者。近著に『日本水没』(朝日新聞出版)