まず、今後すべての連絡は私を通すようにすると通告させました。次に私が直接、男性に会い、ストーキング行為をやめるよう説得しました。しかし男性は「自分こそが被害者である」と主張し、写真を使った脅迫もやめようとしません。私は「あなたのしていることはストーカー規制法違反であり、今後、彼女の写真が1枚でも、一部でも世の中に流れたら、刑事と民事の両方で徹底的に闘う」と宣言しました。しばらくは私に対しても執拗なメールでの攻撃が続きましたが、やがてストーカー行為はなくなりました。

会社の取引先の男性にストーカー行為をしてしまった女性

 次の例は、別の女性からの相談です。会社の取引先の男性から誘いを受け、たびたび食事に行くようになり、やがて毎月のようにホテルに行く関係になりました。しかし、寝るときに裸になって接触はするけれど、セックスはしないというのです。不安になった女性が「私たち、交際しているの?」と聞くと、「考えたことないなぁ、セックスしていないからなぁ」とはぐらかされます。

 そんな関係が3年も続いたある日、男性が別の女性と食事をしているのを知りました。女性がそのことを咎(とが)めると、「付き合ってもいないのに、勝手なことを言うな」とひどく怒鳴られました。それから女性は男性に毎日、LINEで文句を言うようになり、ブロックされると会社で待ち伏せをするようになりました。警告を受けても接触を繰り返し、ついに身柄を拘束されるに至ります。

 私のところに相談に来た彼女は「逮捕されて目が覚めました。相手は既婚者だったかもしれないし、浅はかでした。ただ彼のことをまだ好きなので、無関心になるためにカウンセリングを受けたいのです」というので、対応することにしました。

人間関係の「自明の理」が大きく崩れてしまっている

 それにしても、私たちがこれまで人間関係において「自明の理」と思っていたことが大きく崩れてしまっていることに驚かされます。いま挙げた以外にも、「恋人に毎日メールをしたら、ストーカー呼ばわりされた」と相談に来た男性がいましたが、よくよく聞くと、相手とは会ったこともなく、一度ファンレターに返事が来たアイドルの卵のことを、『恋人』と呼んでいたということもありました。

 また、「ネットでやり取りしていただけで顔も知らない相手から、突然、結婚を申し込まれました。放置していたら、自宅を教えたこともないのに、“いま最寄り駅まで来ている”と連絡があり、怖くて相談にきました」という女性もいました。

 SNSの爆発的な普及もあって、人と人のつながり方はどんどん複雑になってきています。それに伴い、ストーカー問題への対応も一筋縄ではいかなくなってきました。

 そんな時代だからこそ大切なのは、ストーカーにならない、させないという予防です。読者の皆さんに、交際を始めるとき、交際中、そして別れるときに、心がけておいてほしいことがあります。