また、2つ目の大きな変化は「買い手の意識」だという。

「バブルのころはみんなハイブランドを欲しがったし、安価な海外製品はいまだに根強い人気。だけどそれに物足りなさを感じ始めた人たちが、今度は“語れるモノ”を求めているのかなと感じています。SNSの台頭によって、何かを発信したいという欲求が表面化してきた。だから、自分が買うモノのストーリーを知って共感したうえで“実はこれ◯◯の職人さんが〜”って自慢したいんじゃないかな

 とはいえ、語りたい欲求だけで購入するには、少々値の張るモノが多いことも事実。それでもなお、MADE IN JAPANを選ぶ最後のひと押しとなるのは「昔から“変わらない”品質の高さ」だ。

「安いモノを買って、ダメになったら買い直すというのもひとつの選択肢ですが、いいモノを長く大事に使うというのも、またひとつの選択肢。日本の製品は質が高く、壊れにくいですし、万が一壊れても直して使えるものが多い。1万円の器も、30年使えば1年あたり300円程度です」

「ほら」と、高橋さんは1枚の写真を見せてくれた。それは、割れてしまったお気に入りの器を「金継ぎ」という技法で修復したもの。欠片をつないだ箇所には、まるで最初からあった装飾のように美しい金のラインが走っている。

「本当にバラバラだったんですよ。でも、なんか割れる前よりカッコいいでしょ?」

 そう言って、まるで自分の子どもを自慢する父親みたいに、ニッカリ笑う。見るたびに、使うたびにこんな表情になれるモノが暮らしのなかにあれば、単調に思える日常も、いつもより幸せな日々になりそうだ。


<プロフィール>
高橋俊宏さん◎雑誌『北欧スタイル』、『リアルデザイン』などを経て、『Discover Japan』を創刊、現統括編集長。「地域ブランディング協会」代表理事を務めるなど、地域活性活動にも尽力