読書は感情移入することが大事

 作家になってからは純粋な読書が少なくなり、参考文献などの資料を読んだりすることが多くなった。

 現在作家として活躍している人たちは、これまでにどのような読書体験を経てきたのか。「読書は作家と読者の共同作業、“感情移入”が大事なんです」と語る、川瀬七緒さんにインタビューしました。

「活字離れと言われますけど、実際はネットもあるし、若い子も文章は読んでいると思うんです。ただ長いものを読む力がないのかな、と。感情移入することが大事で、それができないと物語を読むのが苦手になるんでしょうね。

 読書は作家と読者の共同作業。著者が書いたキャラや情景描写を、読者が想像力で補填(ほてん)する楽しみがあるんです」

 最新作『テーラー伊三郎』は、川瀬さんが生まれ育った福島が舞台。

『テーラー伊三郎』川瀬七緒=著(KADOKAWA/税込み1620円) ※画像をクリックするとamazonの購入ページにジャンプします(別ウィンドウ)
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「年に1度は福島へ帰るんですけど、3日もいるとやるせない気持ちになってしまうんですよね。そういう田舎の閉塞感みたいなものをどうしたらいいのかということを、おこがましいんですけど自分なりに考えてみた小説です。読後には爽快感を味わっていただける作品だと思います

 最後に、『週刊女性』読者が親子で楽しめるおすすめの本を教えてもらった。

絵本の『ふしぎなかぎばあさん』。鍵っ子が鍵をなくしてしまって……というお話で、私が子どものころに読んだ本です。あとはレイモンド・ブリッグズの『いたずらボギーのファンガスくん』。これは『シュレック』のもとになったと言われている本で、愉快なので大人の方にも読んでほしいですね」

<プロフィール>
かわせ・ななお◎作家。1970年、福島県生まれ。子ども服デザイナーとして働く傍ら執筆した『よろずのことに気をつけよ』で第57回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビュー。著書に『法医昆虫学捜査官』シリーズなど。近著に『テーラー伊三郎』がある

(取材・文/成田全)