高齢者の恋愛心理

 妻をないがしろにしているわけでもなかった。

「よく奥さんと2人で出かけていました。栗田さんは圦本さんの自宅に行ったことがあるみたいで、奥さんとも顔見知りのようでした」と、一家を知る女性は明かす。

 前出・80代の女性は、

「私、前に栗田さんに“ほかに女もいるし、80歳のじいさんがもし庭でこけて何かあったらどうすんのよ、もう別れなよ”って言ったことがあるんです。そしたら、栗田さんは“優しい”って。別れる気はさらさらなかったな」

 高齢者の三角関係は、やがて事件になり、当事者のひとりは命を落としてしまった。圦本さんの意識もいまだ戻らず、2人が倒れていた理由も不明。前出・捜査関係者は、

「栗田さんの死因には事件性をうかがわせるものはありませんでした。風呂の用意があったわけでもなく、なぜ栗田さんが全裸だったのかもわかりません。犯罪死か事故死かの見極めはとても慎重に捜査をせざるをえません。時間はかかると思います」

 と今後を見通す。

 恋愛心理学に詳しい和光大学の高坂康雅准教授は、

「高齢になり、誰にも知られずひとりで亡くなることを恐れたとき、誰か自分を思ってくれている人と最期は一緒にいたいと思うんです。強い気持ちを持っている相手がいれば離れることを恐れます」

 と心理を分析。さらに、

高齢者は若い人と違って出会いの選択肢も減ります。そうなると今の相手に固執することはありえます。孤独感や必要とされたいという思いが相手への依存となり、そこに嫉妬などが複雑に絡まると暴力的になります。元気な高齢者が増えれば、こうした事件は増えるかもしれません」

 と付け加える。

 俳人・小川軽舟さんの代表句、

【死ぬときは箸置くやうに草の花】

 そんな具合に息を引き取れれば理想的だが、男女のぬかるみから抜け出せずにいると高い代償を払うはめに。