夢を追いかけるため、結果的に主夫になったイクタケさん。だが、主夫の道を選ばなくてはいけなかった人もいる。

主夫を名乗るのがつらかった

 慶應義塾大学文学部を卒業し、ディズニーリゾートを経営する会社、オリエンタルランドに就職した、ハンドルネーム・ムーチョこと宮内崇敏さん(30代)。

いまでも義母から「まだ働かないの? と言われます」と宮内さん
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「就職して2年くらいですかね、人間関係で精神的なストレスで体調を崩してしまいまして……」

 休職を経て、入社4年目で会社を退社。ちょうどそのとき、妻が妊娠して長女を出産した。

「僕は子育てをしながら再就職したのですが、体調不良の後遺症みたいなもので仕事を続けられなくなったんです。そんなときに2人目の娘が生まれまして。組織で働くということが僕には無理なのかな、と思い始め、妻と話し合って、僕が専業主夫として子育てをしようと決意しました

 宮内さんの妻は、外資系の医療メーカーで働いている。家庭の大黒柱となったことについて、

「こんなに大変だとは思っていなかった、と。共働きだから、“仕事が大変だったら、辞めてしまえばいいと思っていた”と告白されました。でも、僕が主夫となったので、経済的には彼女が支えていかなければならなくなって。妻も悩んでいたと思います」

 “男が主夫になる生き方もある”と思っていたが、いざ自分がその立場になってみると、ガク然とした。

「一般論としては認めていたんですけど、家事をしている自分に対しての拒否反応がハンパなかったんです。心の底では、専業主婦を少し見下していたんでしょうね。だから主夫を名乗るのがつらくて。自分は社会的に下の部分にいる、なんて思っていました」

 生きている意味がないとまで思い詰めたというが、子育てや家事をしていくなかで、気がついたことがたくさんあった。

「僕はPTAや町内会といった地域コミュニティーにも参加しているんですけど、サラリーマンをしていたときには絶対会えない人たちと話すことができます。会社って、言ってみれば同じ年収、同じような学歴を持つ人間が集まる場所。社会としては狭い世界かなって。企業で出世していくだけが人生ではないし、お金を稼ぐだけが仕事ではないと思えるようになった。いまは生活を楽しめています

宮内さんの漫画「言うとは思わなかった言葉」に、思わず主婦も共感!? ブログではムーチョとして日々の生活を描く。宮内さんのブログ『カタルエ』 http://katarue.com/

 娘たちも9歳と10歳になり、子育ても一段落してきた。

「専業主夫というのは、終身ではなくていいと思っています。いまは娘たちに手がかからなくなってきたので、リモートワークで仮想通貨の関連会社でアルバイトをしつつ、自営業として漫画やコラムの執筆業も行っています。

 主夫を10年くらいやってきてわかったのは、男性や女性という括りで考えるものではないということ。昔の価値観に引きずられて、白い目で自分を見ているのは、周囲ではなく自分自身でした。いまはみなさんに僕たち家族の生活を、胸を張ってオススメできます。ここまで言えるようになるのに、僕は3年かかってしまいましたけど(笑)」