夏場はベターッと寝そべっている
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何度も傷だらけで現れた

 丹さんとぶさおの出会いは2009年ごろ。飼い猫3匹のエサ場に、しょっちゅうぶさおがお邪魔していた。

「家の中へ入ってきて、うちの猫が食べているエサを、ちゃっかり食べているんですね。基本的にはボクや家族がいないときに来ていたようです。要するにドロボー猫ですよ。

 きっとあちこちの家のエサ場を渡り歩いていたんでしょうが、顔がブサイクだったので、家族と“ブサイよね~”と言っていたんです。当時は食べ終えると、とっとと出ていきましたけどね」

 顔もブサイクだが、声はもっとブサい。ビャ~ンと、まるで浪曲師のようなダミ声をあげる。

「のちに知人から聞いた話によると、近所で首輪のついた猫が段ボール箱に捨てられており、それが時期的にみてぶさおなんです。どこかの家で飼われていたんだけど、捨てられてしまったんでしょう」

 しばらくは、そんな状態が続いた。見かけるたび、ぶさおには変化があった。

全身傷だらけになっていたり、血だらけになっていたりね。猫には縄張り争いがあるので、猫どうしのケンカでしょうけど。こいつはそうやって生存競争の中で生き残ってきた強いボス猫だと思うんです。猫の最大の弱点は首を噛まれることですが、こいつは首回りが太くて丈夫だから」

 ぶさおの右耳は少し欠けている。ある日、血だらけで右耳の肉片をぶらぶらさせていたので処置してあげたという。ケンカだけではなかった。

「明らかに人間が手を出した虐待と思えるケースもたびたびありました。全身に赤いスプレーが吹きかけられていたり、接着剤かトリモチのようなものがついていることもありましたし、裂傷もあった。右足を引きずって歩いていたことも。たぶん人間に踏みつけられたんだと思う」

 その足は複雑骨折したまま固まってしまったのか、ぶさおは現在でも少し妙な歩き方をする。

「子どもが面白半分にやったのかもしれませんが、大人の仕業かもしれない。そうやってケガから回復したかと思うと、またケンカや虐待で傷だらけ。その繰り返しでした」