治療のつらさはいろいろだが、池田さんの場合、キャリアの中断が大きかった。

「30代〜40代って、いちばん仕事が波に乗ってる時期。なのに、治療でしょっちゅう会社を抜けなくてはならないし、体外受精の日は直前にならないとわからない。責任ある仕事は引き受けられないですよね」

臨床心理学を学ぶ学生に向けて講演する池田さん。男女ともに真剣に聞き入っている
すべての写真を見る

 不妊は夫婦で立ち向かうべき問題だが、治療を受けるのはたいてい妻だけ。プロジェクトを成功させるなど、社会で活躍する夫を尻目に、クビにならない程度にしか働けない自分にストレスを感じていた。

「いま考えると、会社に事情を話せばよかったと思いますが、当時は治療しているのを知られるのも、気を遣われるのもイヤでした」

 仕事を辞めることを決意し、周囲にカミングアウトしてみると「出産にはリミットがあるからね」と、上司は理解を示してくれた。同世代の友達には偏見がなく、みんなやさしく受け入れてくれたのだ。

流産、死産を繰り返し──

 いよいよ不妊治療に集中することができたが、どうにもならない現実に真正面から直面することにもなった。人工授精や体外受精などの不妊治療に疲れ、もうやめようかと思うと妊娠。希望が生まれたところで、また流産して、の繰り返し。

「朝起きたら、子どものいない1日がまたやってくる。ただ積み重なっていくだけ。毎日がイヤ。朝がイヤ、夜なら寝てしまえるのに。もう終わって……。振り返ると、うつです。当時は助けを求めなかった」