平和国家・日本にいま、できることは?

 状況の凄惨(せいさん)さ、そして国際法が簡単に破られる現状に対して、6月7日には日本の12のNGO・市民団体も外務省に対する要請文を提出している。

「ガザでの抗議運動参加者に対する殺傷力のある武器使用中止の働きかけ、真相調査の調整に尽力してください」と題された声明では、非武装の市民に対する殺傷力のある武器の使用中止、国連による独立調査への協力、そしてガザの封鎖解除についてイスラエル政府に働きかけるよう、河野太郎外務大臣に求めたうえで、面会を希望している。

緊急支援のために聞き取りを行うJVCスタッフ
すべての写真を見る

 なお、前編で紹介した、イスラエル兵の銃弾に倒れて亡くなった「慈悲の天使」ラザーンさんは、実は日本のNGO『JADE―緊急開発支援機構』がガザで実施していたプロジェクトでトレーニングを受け、『パレスチナ医療救援協会(PMRS)』の救護員になっている。

 その資金は日本の外務省や経済界から集まったものであり、事件は決して日本国民の税金とは無関係ではない。またPMRSは、筆者の所属するNGO『日本国際ボランティアセンター(JVC)』などのパートナー団体でもあり、日本ともつながりをもつ。

 一方、提出から2か月がたつ現在も、NGOと外務大臣との面会は実現しておらず、日本政府によるイスラエルへの働きかけもないようだ。

 6月19日、筆者が立憲民主党の議員に招かれ、外務安保部会でガザの状況について報告した際には、外務省担当者から口頭で「日本はこれまでの要人訪問などでイスラエル政府に対し暴力を抑えるよう伝えており、今あらためて伝える予定はない」といった主旨の返答を受けている。

 また、ガザでの人権侵害を鑑みて、イスラエルへの批判を発する国々が多い中、日本はイスラエルへの韓国どころか、逆に官民を挙げ、イスラエルとの協働を勧めているようにも見受けられる。

 8月末には、川崎市とどろきアリーナで、イスラエル防衛&国土安全保証エキスポ『ISDEF JAPAN』が予定されており、日本の市民による反対運動も起きている。

 しかし、アメリカが大使館移転によってイスラエルに有利な方向へ舵(かじ)を切った今、パレスチナの人々が待ち望んでいるのは、弱者の人権のために声を上げ、暴力を止めてくれる公正な仲介人の登場だ。

 日本がその役割を果たすことは、できないのだろうか。

「戦争から立ち直り、立派に復興した日本はお手本だ。ぜひ、仲介の役割を果たしてほしい」という声を、エルサレムでもガザでも、私たちNGO職員は頻繁に耳にしている。

 また、中東と縁が深く、昨年12月にパレスチナ・イスラエルを訪問し和平会議の開催を提案した河野太郎外相であれば、パレスチナの人々の声に応えて日本の独自外交を行う意志や手腕は十分にあるのではないかと考えられる。

「平和国家」として歩んできた日本。ガザの人々の声に触れてきた筆者としては、その経験と公正な視点が、かの地の人々を絶望から救い上げる手がかりになるものと信じたい。


執筆/特定非営利活動法人『日本国際ボランティアセンター』(JVC) パレスチナ事業担当・並木麻衣

JVCはガザの危機的な状況に対し、医療現場を支えるための人道支援を開始しました。「人間らしく生きたい」と願う人々への支援に、ご協力をお願いします。詳しくはこちら『日本国際ボランティアセンター』(https://lp2.ngo-jvc.net/)をご覧ください