米国で面白い実験報告があります。怖い形相のマスクをかぶった人がカラスを捕らえ、恐怖心を与えてから放す。すると以後、怖いマスクの人が歩くとカラスが一斉に甲高く鳴き叫び、羽をばたつかせた。

 時間が経つほどに反応するカラスは増え、直接その経験をしていない1~2キロメートル離れた別の群れのカラスまでもが反応し始めた。

 つまりカラスは自らの直接体験、親から子への情報伝達に加え、ほかの群れとの情報交換という3つの情報源を持つということ。どのように伝えるのかはわかっていませんが、コミュニケーション能力があるということです。

少なくとも1年は覚えている記憶力がある

カラス学のすすめ』を書いた宇都宮大学の杉田昭栄名誉教授(撮影:吉濱篤志)

──つまり社会的な概念がある?

 そう。群れの中での優劣、自分の立ち位置やほかの個体とのかかわりを理解する知性があります。自分の群れはもちろん、ほかの群れでの個体の序列、その序列が逆転したことなども観察して理解できる。

 たまたま同じ電線に止まっていて、「あ、コイツあの群れの弱いヤツだ」ってわかる。証明はされていないけど、一連の観察結果や論法からすると、僕はわかると考えています。ただ、基本的に野生動物は無駄な争いはいっさいしないので、たまたま遭遇した弱いカラスにケンカを売るようなことはしない。

──カラスは数の概念も持つとか。

 たとえば、2つの容器のふたに違う数の模様を印刷し、模様の数が少ないほうに餌があると学習させる。模様で覚えてしまわないよう、色や形、配置を変えます。2と6、3と5とか数を変えて組み合わせたら、ちゃんと少ないほうの容器を選びました。

 ただそれは、カラスが1、2、3と勘定できるかどうかとは別で、あくまでも多い、少ないの比較ですね。

 さらに記憶はどれだけもつのか。2〜3日訓練してその後は遠ざけておき、1年後に再度実験したら、ちゃんと覚えていて正解率100%でした。少なくとも1年は記憶しているということです。

──本ではカラスの生態や身体構造、五感についても詳述されています。

 五感の中で際立っているのが視覚です。人間の色覚は赤緑青の3原色ですが、カラスは赤緑青に紫外線を加えた4原色。これについてはほかの鳥類も同じ。

 よく七色の虹といいますが、彼らは21色なのか28色なのか、より密なグラデーションで色彩をとらえている。味覚については雑食だけど、ある程度味の違いはわかってる感じ。