活動を通じて、刀根さんは仲野さんと知り合う。100時間ほど話し合い、「手を組んでやるしかない」(仲野さん)と思った。

「相談に終わらず、解決に導きたい」と語る刀根さん(左)と仲野さん
すべての写真を見る

「校長を経験した私に、損得なしに言ってくれるのは彼女しかいません」

 仲野さんは前任校・足立区立辰沼小学校で「いじめを、しない! させない!ゆるさない!」のキャッチフレーズをつくり、子どもたち自身によるいじめ防止活動を後押ししてきた。

 例えば、「辰沼キッズレスキュー」という団体を結成し、休み時間にパトロールする活動を見守った。

「子どもの正義感をかき立て、平和な学校を実現しようとしました。子どもたち自らがいじめに向き合い、自分の問題として活動しなければ、真の意味の解決はありません」

 いじめの相談があると、仲野さんと刀根さんは2人で話を聞くが、ほとんどが親から。子どもとつながることも課題のひとつだ。

立ち上げの遅れが目立ち、地域格差も広がる調査委

 いじめが起き、自殺や自殺未遂、不登校などにつながった場合は「いじめ防止対策推進法」により、「重大事態」となる。学校または設置者(公立校の場合は教育委員会)は調査することになる。『道徳教育は「いじめ」をなくせるか』の著者で、千葉大学の藤川大佑教授はこう話す。

「(学校や設置者は)いじめの認知も、重大事態の認定も、調査委の設置も遅いのが現状です。不登校ですと30日以上の欠席で重大事態と判断されますが、調査委の設置は子どもが半年以上休んでからということも多く、自殺の場合でも1年以上かかったりします」

 法律では「すみやかに」としているが、

「自殺の場合、時間をかけても事実を明らかにすることが望ましい。一方、不登校の場合は、被害者がなおも苦しんでいれば、スピードが求められます」(藤川教授、以下同)

 調査のあり方についても議論が分かれる。客観性を意識して被害者・遺族と距離を置くやり方がある一方で、繰り返しコミュニケーションをとり、意見をすり合わせる方法もある。

「客観的調査というと、被害者・遺族と距離を置くことになりがち。ですが、被害者・遺族から“よく調べた”と言ってもらえるぐらい丁寧な調査が必要です」