「英子さんは可愛らしい人でね。映画が完成した後、初めてお会いして一緒に居酒屋に行ったんですけど、いいエネルギーに満ちあふれていた。ああいう女性は、修一さんのようないい旦那さんがちゃんと来るのね。散らかさなくてつつましくて始末がよくて、でも大胆なところもある旦那さんで、本当に素敵なご夫婦。

 映画を見て“こんな人生を歩めたら言うことなし”だって、みんなそう思うんじゃない? もちろん、その人生がうらやましいとか、自分の人生がイヤだとか、そういうことはないのよ。でも、それはそれ。こういうふうな道しか歩けない私は私。だけど、津端さんのような人生も見事だなぁと思いますね」

 反骨のロックンローラー・内田裕也さんとの結婚生活は43年になる。

 “私の不満の人生の中で、危険なものをつかんだ。ここなら生きられると思った”という相手。警察ざたになるほど大ゲンカをしたこともあるし、離婚しかけたこともある。しかし、長い別居生活を過ごしつつ、今も夫婦でいる。

「うちは年をとっても若いときと変わらない。性格がまったく同じだから、何を考えてるか読み取れるし、争いにもなる。ただ、最近は年とってきてエネルギーがなくなったからケンカしなくなっただけ。“この野郎!”となっても、“杖はどこいった?”じゃどうしようもない。そのうちに“面倒くさいかぁ”で終わり。別に仲よくなったわけじゃないのよ

『人生フルーツ』の英子さんは旦那さんのことを“年とっていい顔になった”と言ってるんだけど、うちは両方ともそんな境地じゃないわね。たまに顔を見ると“この人、昔はもうちょっと男前だったのに。どうしてこうなっちゃったのかなぁ”なんて思うもの。それはお互いだろうけど、決していい顔にはなってない。むしろ“奇っ怪(きっかい)”。とんでもないキャラクター商品って感じ(笑)

撮影/枦木 功
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本木さんとは全然性格が違うから、よくわからなかった

 30歳のときに出産したが、子育ても希林さん流だったという。

「私は、相手の気持ちに入り込むのが面倒くさいの。一歩引いてるというか。子育てもそう。例えばケーキをもらったら、私はまず自分が好きなのを取っちゃう。娘に“どれがいい?”と言って先に選ばせるなんてこと絶対にしない。だから、早く嫁に行ったんじゃない? きっとうちが居心地悪かったんだと思う

 娘の也哉子さんは19歳のとき、俳優の本木雅弘さんと結婚。長らく二世帯で同居し、3人の孫にも恵まれた。

「今、娘一家はイギリスに行っちゃったけど、それまではうちの上に住んでました。家族円満に見える? なんかねぇ。円満になっちゃったのよね。最初はそうじゃなかったのよ。本木さんとは全然性格が違うから、よくわからなかったし。ただ、みんな調整しながら、譲り合いながら乗り越えてきたんだわね。

 別に我慢や無理はしてないですよ。ああ、そうなんだ、この人はこういう性格なんだと思うだけで、どうこうしようと思わない。それは子どもや孫に対しても同じ。まぁ、二世帯住宅で、台所も玄関も違うし、まったく会わない日がいっぱいあった。距離がおける暮らしだから、やってこれたんでしょうね」

 同居しているときから、自分のことは自分でする主義。石けんはひとつしか持たず、それで身体も食器も衣服も洗う。お経をあげるのと、掃除をするのが日課だそうだ。仕事もマネージャーはつけず、ひとりで現場に向かう

「病気してからも普通に食べるし飲むし。無理してる感じはないのよね。年をとっていくことに対して何も抵抗ないから、苦労もないし。もともと少欲なの。仕事については、基本的に来た順番に引き受けているだけ。あまり先のことだと、わからないからお断りすることもあるけどね」