首都東京はここ10数年で大きく様変わりした。別表(※下)のように、路上生活者はおよそ10分の1まで激減している。一方、生活保護を受給する世帯は約1.5倍と急増。要因としては景気悪化や高齢化、政府の無策などさまざま考えられるが、脱ホームレスをした人も含まれる。

※単位は、路上生活者=人、生活保護受給者=世帯。前者のデータは東京都福祉保健局の調査から。後者は東京都「福祉・衛生統計年報」から
※単位は、路上生活者=人、生活保護受給者=世帯。前者のデータは東京都福祉保健局の調査から。後者は東京都「福祉・衛生統計年報」から
【写真】浄化された街並みと、取材を受けるホームレスの人々

 ホームレスの減少は五輪開催に向けた浄化なのか。

 東京都の生活福祉部保護課は「浄化という言葉はあたりません」と否定する。

「都は路上生活者を減らすため、'00年に23区と共同で自立支援センターを立ち上げ、就労もしくは生活保護受給に向けた手助けを地道にやってきました。五輪を開催するからではありません。粘り強く声かけなどをしてきた結果、ホームレスが減ったと認識しています」(都・同課)

 都は長期ビジョンで'24年までに「ホームレス・ゼロ」とする数値目標を掲げており、五輪の4年後を見据えている。

 同じ質問を、新宿区福祉部生活福祉課にもぶつけた。

「浄化といえば、汚いものをきれいにするという意味ですが、福祉の立場では最低限の生活を維持できない人を支援するということであって、少し違います。'06年には新宿区も自立支援計画をまとめており、生活困窮者自立支援法と生活保護法の利用割合は半々といったところです。法律上、生活保護の申請があれば行政は受け付けます」(区・同課)

 都と同様、五輪を開催する前に……との考えでは取り組んでいないという。

 立ち退き料1人50万円の噂については、都も新宿区も完全否定した。「福祉につながらない立ち退き料を行政が税金から払うことなどありえない」(前出の都の保護課)ということだった。

 2年後の夏、今回の取材に応じてくれた彼らはどこにいるだろうか。


やまさき・のぶあき◎1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物などさまざまな分野で執筆している