――なるほど。カジノはギャンブル好きの大人だけのものではないということですね。

尾嶋 そうですね。パチンコ屋や競馬場を作るのとは、全然違います。さらに言えば、「日本にカジノを作ったらギャンブル依存症の人が増えるのでは」という議論がありましたが、マイナンバーを利用し所得の割合で賭けられる金額を規制するなど、方法はいろいろあると思います。

カジノは“富裕層にお金を落としてもらうためのツール”

尾嶋誠史=著『カジノエージェントが見た天国と地獄』(ポプラ新書)※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

 それと、カジノは一般客を狙うよりは、海外の富裕層を招致してお金を落としてもらうためのツールだと考えたほうが良いですね。実は、マカオのカジノの売上のうち、60%前後を占めるのが先ほどお話したVIPルームからの収益です。富裕層は滞在ごとに1人あたり1億円近くものお金を使うので、当然ながら落としていく利益も莫大なのです。

――マカオやシンガポールなど、アジア近隣にすでに成功しているカジノがあるのに、わざわざ海外富裕層が日本のカジノに訪れるのでしょうか?

尾嶋 日本には海外にはない「おもてなし力」があります。海外に行ったことがある人ならわかると思いますが、日本のサービス力はやはりずば抜けている。その細やかな気配りは、VIP待遇に慣れた世界の富裕層にもじゅうぶん訴えかけるものでしょう。

 特に、マカオのVIPルームを利用するお客の9割は、中国人富裕層です。ですから日本にカジノができた場合も、この中国人富裕層を取り込むことが必須だと思います。距離的にも近いですし、何より中国ではいまだに日本へのブランド信仰も根強いので、その利点も得られますから。

――カジノは日本にとって貴重な観光資源になり得るということでしょうか。

尾嶋 そうですね。ただ、繰り返しになりますが、単に「カジノを作れば儲かる」わけではなく、「富裕層をいかに取り込むか」が成功へのカギです。そのためには、大富豪たちにとって魅力的な、エンタメ性の高い施設やサービスの提供、また、彼らがカジノでスムーズに遊べる仕組みを確立するなどの配慮が必要でしょう。

 そうなると、過去の実績や経験、ノウハウがある海外のカジノ会社に運営に携わってもらうのは必須だと思います。カジノの本質を理解しないまま、いざカジノを作ったものの、結局、運営がうまくいかずに何も得られない……。という事態は、非常にもったいないですから。 

 日本におけるカジノ建設問題については、「治安が悪くなる」「ギャンブル依存症が増える」など部分的に負の側面だけを切り取って論じるのではなく、「外貨を獲得するため、カジノを成功させるにはどうしたらいいのか」という課題を据えて、行政や地域住民が対応をきちんと考えていくべきではないかと思います。


《PROFILE》
 尾嶋 誠史 ◎おじま・まさふみ。1977年8月6日、栃木県宇都宮市生まれ。アパレル企業に就職するも、「固定給ではどれだけ努力をしても収入が上がらない」という現実にぶつかり、歩合給の営業の世界に。収入は10倍になったが、睡眠時間もなく働く日々に疑問を持つように。
 25歳で、ある事業家との出会いにより、お金と時間の両立を求め、「行きたい時に世界中の行きたい所へ行く生き方」を決断し独立。現在、マカオでカジノのエージェントとして働きながら、香港や日本でも貿易など幅広くビジネスやコンサルティング事業を行っている。『カジノエージェントが見た天国と地獄』が初著書となる。