ある日のこと、僕が彼の代わりにホテルのチェックインを済ませて戻ってみると、すごく不機嫌な顔をされていて。「今日は全くついてない……!」とつぶやいているんです。「どうしたんですか?」と聞いたら、「チェックインするお前を待っている間に、隣のカジノに行ったら1億円負けた」と!

尾嶋誠史さん

 おそらく、チェックインにかかったのはわずか10分足らずだったと思うのですが……。それでも彼は、僕があ然としている間に「もう一度巻き返してやる」と、再びカジノに吸い込まれていったのです。結局、3日間の滞在で30億円ほど負けて帰っていきました。あれほど負けっぷりのいいお客様は、いまだかつて見たことがありません。

 また、マカオの場合、全体のお客様の8~9割方は中国人ですが、日本人の方もたまにいらっしゃいますね。以前、一番大勝ちされていたのが日本人旅行者のお客様で、元手3万円を3億円にした30代の男性サラリーマンでした。

 彼がマカオに来たのはそのときが初めて。「思い出づくりに」と、3万円ほどの軍資金を持って一般フロアで遊んでいたのですが、スロットマシーンで高額ジャックポット(大当たり)が発生! たった1時間で3億円もの大勝ちを収めていました。一般企業にお勤めの方でしたが、おそらくその後、会社は辞められたんじゃないでしょうか。

 額の大きさで言えば、半日で6億円を稼いで颯爽(さっそう)と引き上げて行った、黒髪で中肉中背の中国人女性客にも驚かされましたね。4日間の滞在で彼女がカジノに現れたのはその日限り。後はお友達とマカオ観光を楽しんで、笑顔で中国に戻られました。

ハマりすぎた先に待っているのは……

――そんな大金が当たれば、人生が変わりそうです。

尾嶋 天国を味わった方々とは対照的で忘れもしないのが、ごく一般の企業に勤める40代の日本人男性が、数億円をバカラで失ってしまった事件です。彼は地方企業の御曹司。ラスベガスのカジノで「50万円をウン千万円にまで膨れあがらせる」という成功体験をしてからというもの、ご自身を「ツキのある男」だと信じ、マカオにも足を運ぶようになりました。

 最初はマカオでも一晩で5000万円を手にするなど、景気のいい大勝負を繰り広げていましたが、それがカジノの怖いところ。楽して大金を手にしてしまうと、簡単には抜け出せなくなるものです。彼は勝った日の高揚感が忘れられずにカジノ通いを繰り返し、ついには数日間で4億円もの負債を作ってしまいました。

 とても彼ひとりでは手に負えない額で、負債はお父様が立て替えることに。突然、マカオから見知らぬ人間が押し寄せて、「息子の借金を返せ!」と迫られたときのご家族の心情を思うと……。結局、お父様個人の資産だけでは賄えず、会社を売却し、ご家族は身ぐるみ剥がされるような事態にまで陥ってしまいました。