男の傲慢、世間の冷たさを看破する

 有村から「教師を続けたいから、まだ一緒には暮らせない」と言われて、ちょっとへこむ町田を気持ちよく叩き斬る羊姐さん。「結婚しようと言えば、仕事やめて尻尾振ってすぐ来るとでも思ってたのか?」と突きはなす。

 もちろん、町田は傲慢な男ではない。

 むしろ優しくて気遣いのできる男性なのだが、有村がやりがいを感じている仕事をやめさせることには反対なのだ。そこは有村の、というか女性の味方でもある。そして、羊姐さんは会社や世間に対する呪詛(じゅそ)も大声で叫んだりする。

「どいつもこいつもレッテルを貼りたがる!」

「どうせ女は結婚してすぐやめる。残った女は不倫か干物か、メンタル不安定!」

「バイセクシュアルと知って急にシャッターを下ろす人もいる!」

 羊姐さんは自由気ままに、傍若無人に振る舞っているように見えて、本当はこの世でいちいち傷ついているのだ。

 痛いとかツライとか言わないだけで、実は傷だらけ。満身創痍。強い女、かっこいい女を気取っているだけで、本当はガラスのハート。いやそれ、結構、厄介だよな。

好きな男にド直球、壁あて状態

 有村の気持ちが岡田へと向いていく中、羊姐さんの気持ちもどんどんまっすぐに町田へと向かっていく。その速度、マッハ。そのやり口、ストレート。

 淡々と簡潔にしゃべる羊姐さんだからこそ、町田への強い思いが伝わってくる、視聴者に。残念ながら町田には伝わらない。それどころじゃないからだ。

 羊姐さんは、町田のネクタイをつかんで引き寄せ、「なんで私と話すときいつも体を引くんだよ。傷つく」と言ってキスをしたり、「欲しくなった」と目を見て告白したり。

 町田だけでなく、有村にもわざわざ直接、会いに行き、気持ちを確認しようとする。これでもかこれでもかと、ド直球を壁に向かって投げまくっている感じだ。

 しかし、有村は有村で自分の気持ちにうそをつき、町田は町田で見てないフリ、聞こえないフリ、平気なフリをする。生徒との不適切な関係を親から糾弾され、退職することになった有村。結婚という形ですべてをなかったことにしようとする町田。

 親心と女心がないまぜになった羊姐さんは、とうとう町田に「あんたはもっといい男のはず。見どころある男なの!だから、あんたがいいの!好きなの!」と電話で伝えてしまう。うそをついたまま、偽りの結婚をしようとするふたりにストップをかけるのだ。