家族にひとり、頑張りやさんがいると迷惑 

 さて、そんな田中圭の母親役の田中美佐子も、アラート案件だ。寝たきりの状態である夫を自宅で献身的に介護している。

 もうひとりの息子・金井勇太からは入院を勧められているが、拒み続けている。劇中では、美佐子と夫との若かりし頃の出会いが郷愁たっぷりに語られるシーンがあった。夫を心の底から愛している、という背景なのだが、心を鬼にして、大声で言わせてもらうぜ。

 家族の中にひとりだけ、介護を頑張っちゃって背負いこむ人がいると、他の家族はめっちゃ大変! クッソ迷惑! 愛しているのはわかったけれど、愛があるなら専門知識と技術をもったプロフェッショナルにまかせなよ! 

「お父さんがかわいそう」「お父さんの介護は私が!」なんつって、頑張り過ぎて身体を壊しちゃったりすれば、共倒れ。もっと大変な状態になる危険性もある。息子の嫁(青山倫子)も結局介護をするハメに……。え、それでいいのか? 幼子抱えて、それでいいのか?

 私事だが、今年の春、父をようやく特別養護老人ホームに入れた。母がひとりで頑張るタイプで、その結果、ふたりともが倒れて、どうしようもない状況になった。そこでようやくホーム入居を決断した経緯がある。

 ところが、「お父さんを家に帰そうと思うの。あんなところにいてかわいそう」と定期的に言い出す。老々介護は不可能な状況だと何度も言っているのに、世話焼きの頑張りやさんは自分で背負いこもうとする。父をホームにおいやった私がまるで悪者扱い。

 悪者上等。血も涙もないと言われようと、母の健康状態と残りの人生を考えれば、父は安心して暮らせるホームにいるほうがいい。そんなこともあって、田中美佐子にちょっと舌打ちしてオンナアラートを鳴らしたいのだよ。

 なんで介護っつうと、女が背負い込む形で、美談にされちゃうのかなぁ。


吉田潮(よしだ・うしお)◎コラムニスト 1972年生まれ、千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。テレビ『新・フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターも務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)ほか多数。新刊『産まないことは「逃げ」ですか?』に登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。公式サイト『吉田潮.com』http://yoshida-ushio.com/