強制不妊手術をめぐる問題について、マスコミが取り上げたこともあった。しかし、大きな関心を集め社会的問題として広がっていくことはなかった。

「DPI女性障害者ネットワーク」メンバー  米津知子さん

「被害に遭った当事者は語りにくかった。それに近い人も語りにくい。当事者でない人が、自分に引きつけて考えることも難しかったでしょう」(米津さん)

「国会に訴えても、なかなか広がらなかった。それだけ忘却されてきました。だからこそ、“そんな法律があったのか”と最近になって注目が集まったのではないでしょうか」(大橋さん)

 障がい者への見方が変化していった結果と言えるのだろうか。ただ、現在でも、胎児に障害があるかを検査する「出生前診断」を希望し、障害があるとわかると、中絶を選択することも多いと言われている。

「“出産できるピーク”を強調して、“早く産まないと妊娠しにくくなる、障害がある子どもが生まれやすくなる”と女性たちにプレッシャーをかける情報があふれています。自治体が流す婚活や妊活の情報にも盛り込まれている。産む・産まないは女性の権利なのに、幸せを決めつけられている状態です」(大橋さん)

 人間の価値を「生産性」ではかる考え方は、最近ものさばっている。米津さんは、ポリオにかかったことで手足に障害を持つ立場から、こう話す。

「そういう考えは、自分を苦しくしてしまうのでは? なにかうまくいっていないことがあると、許せなくなるのではないか。障害のあるなしにかかわらず、うまくいかなくてもいいと思えれば楽になるはず」(米津さん)

障がい者らの大量殺人事件を振り返って

 2016年7月26日未明、神奈川県相模原の県立知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で、元職員の植松聖被告(28)が入所者19人を殺害、入所者・職員あわせて26人にケガを負わせた。2年が過ぎた現在では、事件の現場であった施設の解体が進む。

 風化が指摘されるなか、相模原事件について語り継ぐ当事者がいる。任意団体『にじいろでGO!』代表で、知的障害のある奈良崎真弓さん(40)だ。

「事件は早朝だったので、最初は、ぼーっとニュースを見ていて。夕方になると、知人と一緒に入った居酒屋で、やっぱり事件のニュースが流れていたんです。寒気を感じたと同時に、なぜか高い声で笑っていた」

 実は、1989年の東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件のときも、ニュースを見て同じように反応していたと兄から聞かされた。何か世間を騒がす衝撃的な事件があったとき、笑うことで、感情のバランスをとろうとするのだろうか。

「その後、1日半だけ、まじめにテレビを見てました。19人の仲間が亡くなったことの悲しさを感じました」