軽井沢でのテニス仲間・篠原克代さん

 '80年ごろ、自宅近くのテニスコートで皇室と関係のある方とよくテニスをしていました。ある日、現在の両陛下もお見えになられてから、ご一緒にテニスをさせていただくようになりました。

 おふたりでダブルスを組まれることが多く、美智子さまは後衛で粘り強くボールを返されていたことを覚えています。テニスが終わると毎回、コートの2階にある貴賓室でのお茶もご一緒させていただきました。

 旧軽井沢にあるテニスコートでは、喫茶店が閉まっていると、美智子さまが「ジュースを買ってきますが、何を飲まれますか」と、自動販売機で買ってきてくださるというお気遣いまでしていただいたこともありました。

 あるときのテニス帰りに「私の主人は、妃殿下が軽井沢に疎開されていたときの小学校で、同級生だったんですよ」とお話しすると、驚かれていました。「今は何をされているのですか」と聞かれ、美術の教員だとお伝えしたら「描かれた絵を見せていただきたいです」と、おっしゃられました。その数年後の夏、夜8時半ごろから1時間ほど、両陛下が自宅にお越しくださったのです。

 私と主人とそれぞれの両親も一緒にお迎えしたのですが、美智子さまは真っ先に、私の母親に「お身体の具合はいかがですか」とお声がけくださいました。

 数年前に母親が食道がんになってしまったことを以前にお話ししたことがあり、温かいお気遣いに感激したことを覚えています。それからもテニスをご一緒しておりましたが、軽井沢のとあるホテルにお招きいただいた折、美智子さまが「一生のお友達でいてね」とおっしゃってくださり、感激いたしました。

 自宅にいらっしゃった際に『あんずのシロップ漬け』『きゅうりの粕漬け』、うちで収穫した『インゲンのおひたし』と、チョコレートケーキをお出ししたところ、美智子さまがいちばんお気に召されたのが『あんずのシロップ漬け』でした。美智子さまは「皇居にあんずの木があるので作りたいです」とおっしゃったので、レシピもお渡ししました。「おいしいです」と召し上がられて、ケーキ以外はおかわりしていただけるとは夢にも思いませんでした。

 アトリエを見ていただいた際に、主人が描いた浅間山の絵を2点献上させていただくことになりました。美智子さまは、「陛下のお選びになった絵は見れば見るほど素敵ですね」とおっしゃって。一般的な夫婦ではあまり考えられない素敵なおことばで、いまだに忘れられません。皇室と国民の絆を深めてこられたのは、美智子さまのお人柄もあると思いますが、今後はゆっくりされながら、大好きな軽井沢でもお過ごしいただければいいですね。