早めの“介活”開始が重要

 財務省は昨年4月、財務大臣の諮問機関・財政制度審議会で、年金の支給開始を現行の65歳から68歳に引き上げる案を掲示している。

「それだけにとどまらず、年金の受給額も必ず目減りします。90歳まで生きることを考え、自由に使えるお金を減らすしかありません。“終活”を考える前に、介護を受ける心構えや準備、つまり“介活”が必要になるのです」

 介活の内容は、子どもがいるかいないか、持ち家かどうかで大きく変わる。

「子どもがいる場合、毎月3万円ほどは仕送りがあるかもしれません。しかし、子どもがいても疎遠なことがありますし、子どもがいない夫婦も珍しくない。このように子どもの援助が望めない場合は、早い時期から老後資金の準備を進めるようにしましょう」

 日本の年金制度は10年(120か月)以上、保険料を納めなければ1円ももらえない。厚生労働省の発表では、'17年度の国民年金の納付率は66・3%だが、全額免除者などを含めると、実質的には40・3%にまで下がる。

「今後は無年金の人が多くなるでしょう。生活が立ち行かなくなる前に、生活保護の申請も考えていくべきです」

 老後を考えるうえで、結城教授が「盲点」と語るのが保証人の存在だ。

「賃貸住宅を契約するにしても、入院・手術や老人ホームへ入居するにしても、老後はさまざまな場面で身元保証人が必要になります。身内がいない場合に利用できる保証人サービスもあるので、確認しておくといいでしょう」

「100年安心」と掲げておきながら、老後の命綱としてあまりに心もとない日本の年金制度。個人の備えが重要になる一方、国として、どう改革していくべきか?

「このままでは団塊ジュニア世代が最も悲惨な老後を迎えることになります。そうしないためには、国の制度を変えるしかありません。

 現在の年金制度は、若い世代から徴収した保険料で高齢の世代を支える仕組みです。これをお金持ちから取る方向へ変えないといけません。世代間ではなく、同世代で、持っている人が持ってない人を支える仕組みが必要です。ただ、こうした考えをしている政治家はいません。なぜなら、持っている人が政治家や官僚だったりしますから」

 あとは条件つけで「移民」を受け入れるしかない。今年4月の入管法改正により外国人労働者の受け入れが拡大されたが、

「単純に外国人労働者という枠組みではなく、日本社会のメンバーとして受け入れるのです。そうすれば、人口構造がいびつではなくなります」

 参院選では、どのような基準で選べばいいのか?

「将来の日本、社会保障をどう考えているのかが大事です。具体的な青写真を描いていなくても、そうした視野を持つ政党はあります」

(取材・文/渋井哲也)


《PROFILE》
結城康博さん ◎淑徳大学教授。専門は社会保障論、社会福祉学。『突然はじまる! 親の介護でパニックになる前に読む本』(講談社)ほか著書多数