普通を描くことは
本当に難しい

 赤堀作品に登場するような普通の人々を演じることは、難しいと感じているそうで。

向井理 撮影/齋藤周造
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「あんまり普通に思われないんですよね。だからいろんなことを捨てていこうとしても捨てられない。外見だったり身長や体重とか変えられないものってあるじゃないですか。そのパブリックイメージがあることで、役者をやってるうえでは損してるなと思うことのほうが多いです。そういうコンプレックスも実はあるんですけど。生まれもったものだからしょうがないんですが、説得力のある普通を描くってことは、本当に難しいと思います」

 20代後半は、「ほとんど記憶にない」くらいの忙しさだったと振り返る。

年間10日くらいしか休みがないときもありましたけど、そういうことって経験したくてもできないですから、ありがたかったなと思うし、そのときについた体力はまだ残っていると思うんですよね。だから、どれだけセリフが多くても、そんなに気にならないですし。それはやっぱり、あのころに比べたらっていうのがどこかにあって。たぶん、乗り越えたっていうのが自信になっているんですよね。その経験があるから、今があると思いますし。あの時代のおかげで、面の皮は厚くなった気がしますね(笑)」

 30代後半を迎え、役者として興味があることは?

「もうアラフォーですよ(笑)。そんなに長いキャリアではないですが、14年間いろいろな作品を経験させていただいてきましたけど、常に刺激は欲しいなって思います。今作もそうですが意外だって思われるものをやりたいですね。厳しい作品に挑戦して新しい引き出しを増やしていきたいです。

 もうひとつ本業とは別のところで興味があるのは、自分にしかできない旅のドキュメンタリーを作っていきたいと思っています。2018年に、自分から企画を提案してブータンに行ったんですけど。観光では行かないようなところを見て聞いて紹介することで、平和である日本のよさや日本人のアイデンティティーを再確認してもらえるんじゃないかと思うんです

『美しく青く』

Bunkamura30周年記念
シアターコクーン・オンレパートリー2019
『美しく青く』

作・演出/赤堀雅秋 震災から8年たった、とある田舎の集落。住人たちはそれぞれに日常を取り戻し、平穏に暮らしていたが、エサを求めて人里に下りてくる猿の獣害に悩まされていた。青木保(向井理)は、その対策のために自警団を結成し、そのリーダーとして活動するが……。市井の人々の日常を独特の視線で描く赤堀流ネオヒューマンドラマ。
◆東京公演:7月11日~28日@Bunkamuraシアターコクーン
◆大阪公演:8月1日~3日@森ノ宮ピロティホール
【お問い合わせ】(www.bunkamura.co.jp

むかい・おさむ◎1982年2月7日生まれ。神奈川県出身。2006年にドラマ『白夜行』で俳優デビュー。以降、テレビドラマ、映画で多くの話題作に出演。『星回帰線』、劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season風など、舞台作品にも多数出演している。現在、映画『ザ・ファブル』公開中。映画『引っ越し大名!』が8月30日公開予定。

<取材・文/井ノ口裕子>