ホラーがすたれるそのときは…

 ちなみに、ホラーの巨匠にも、怖いものはあるのだろうか?

飛行機だけは勘弁してほしい! あんな鉄の塊に乗るなんて狂気のさたですよ。私は新幹線だって、いやいや乗っているくらい。乗車早々に缶ビールを開けて、すぐ夢の中に逃げ込むようにしています。

 幽霊は怖くないかって? 幽霊が人に危害を与えた、なんてニュースは聞いたことがないでしょ? 物理的な恐怖に勝るものはない(笑)」

日野日出志=著『ようかい でるでるばあ!!』(彩図社)※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
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 それにもかかわらず、人がホラーに魅せられてしまうのはなぜなのか?

「人間は、古来から怖いものだらけの中で生きてきたと思います。暗闇が怖いから火を灯したように、ひとつひとつ怖いものを消してきた。ところが想像力が働く限り、恐怖をぬぐい去ることはできない。

 例えば江戸時代には、井戸から現れる狂骨という妖怪が描かれている。現在、井戸は一般的ではなくなったから、狂骨の存在も語られなくなりました。でも現代では、例えば夜のエレベーターに恐怖を感じている人は多い」

 人間の想像力が働くかぎり、「恐怖は器が変わるだけで、中身は変わらない」。そう先生は断言する。

「ホラーというのは、想像力の賜物なんです。余計なことを考えすぎるから、新しいホラーが生まれる。そして、想像力が働いているもんだから娯楽としても楽しんじゃう。余計が生み出した文化、それがホラーや怪談でしょう。

 だから、ホラーがすたれるときは、人間から想像力が失われたときだと思うんです。そんな世界が訪れることになったら、それこそ笑えない。ホラーが親しまれている世界は、豊かなんですよ」


《PROFILE》日野日出志さん ◎ひの・ひでし。漫画家。大阪芸術大学芸術学部キャラクター造形学科教授。1967年のデビュー以来、雑誌『ガロ』『少年画報』などで作品を発表。ホラー漫画界の重鎮として人気を確立