“マヨネーズ状”の軟弱地盤

辺野古埋め立ての現状 ※図は取材をもとに編集部が作成
辺野古埋め立ての現状 ※図は取材をもとに編集部が作成
【写真】辺野古埋め立ての現状を図でチェック!

 もとは京都市役所の職員で、土木建設工事の発注・現場監督・設計変更など、公共工事全般に関わってきた経験を持つ土木技術の専門家である。そんな北上田さんが定年退職後、第2の人生を過ごす土地として選んだ沖縄に家族と移り住んだのが12年前のこと。北上田さんは、京都時代にも行政オンブズマン的な市民運動の過程で情報開示請求の経験は豊富だった。

「行政がいま、いったい何をやろうとしているのか。その内容をきちんと把握するには、公的文書を入手して確かめるしかないですからね」

 北上田さんにとっては、知りたいことを知る当然の手段のひとつが、行政組織に対する公的文書の公開請求(情報開示請求)なのであり、沖縄で基地問題に関わることになったときも、その姿勢はおのずと生かされた。

 しかし、いつでも知りたい情報がすんなり得られるかというと、違う。世にいう「のり弁」状態の黒塗り文書しか開示されなかったり、公開時期をひたすら延ばされる嫌がらせのような仕打ちを受けることもある。だがしかし、開示された文書がきっかけとなって、行政側の嘘やゴマカシが明らかになることがある。

 北上田さんの大きな功績は、高江ヘリパッド建設や辺野古新基地建設に関する沖縄防衛局側の杜撰な計画やデタラメな作業ぶりを、公開された文書や現場での視察を根拠として追及し続けてきた点にあり、その成果は枚挙に暇(いとま)がない。しかし紙数に限りがあるので、今回は、辺野古新基地建設工事に関するたった1点、しかも最大の成果といえる部分に絞って書いておこう。

 '18年1月に北上田さんが防衛局に対して公開請求していた文書が同年3月、開示された。土質調査に関する2件の報告書だった。当時を振り返り北上田さんはこう語る。

「埋め立て計画の最重要部分である大浦湾には、活断層の疑いが指摘されていましたから、その専門の研究者に提供する目的で開示請求をしたんです。意外にもあっさり土質調査の報告書は開示され、いまでは有名になった“マヨネーズ状”と言われる軟弱地盤の存在が明確になりました

 実は、晩年の翁長雄志前知事が「埋め立て承認撤回」に踏み切る決断ができた最大の事由が、この軟弱地盤だったと言われている。実際、翁長知事が亡くなった直後の'18年8月31日、謝花喜一郎副知事によって埋め立て承認撤回の手続きは断行されたが、その根拠の核となったのが、やはり軟弱地盤だった。