貴重なオーロラで南極気分

 そもそも南極点の気温こそマイナス60℃と想像を絶するが、昭和基地周辺はというと北海道の冬くらいで、思ったよりも寒くはないそう。この日の現地の気温は「マイナス7℃」と表示されている。

 そんな昭和基地のライブ映像が見られるのだが……、モニターは真っ暗。故障?

 「南極は、日本と真逆で今は冬。しかも今は太陽が昇らない“極夜”(取材時)なので、ずっと夜だから暗いんです。でも、運がよければオーロラを見ることができますよ」

 そのオーロラを、ここ科学館では常時見ることができる。「TACHIHIオーロラシアター」では、直径4mのドーム型スクリーンに実際に南極や北極で観測された貴重なオーロラ映像を上映。幻想的に揺れるオーロラをゆったりと眺めれば、もう南極気分。

 そして館内でひときわ目を引くのが、ドドンと展示された雪上車「KD604」。'68年に、日本の観測隊が初めて南極点に到達したときに使用された実物だ。マイナス60℃の環境下で、標高4000m、5200kmの氷原走行に耐え、5か月かけて南極点までを往復したのだ。定員4名の狭い車内に揺られ、それでも11名の隊員が3台の雪上車に乗って命がけで目指したと考えると、当時の日本にとって南極点は歴史を変える場所だったのだろう。

車内は狭いながら、2段ベッドや調理台も 撮影/渡邉智裕
車内は狭いながら、2段ベッドや調理台も 撮影/渡邉智裕
【写真】まるで学生寮のような隊員の部屋、南極に到達した雪上車

 そんな使命を引き継いできた今日、南極に関する研究分野は細分化。それぞれの専門家が第60次越冬隊員(31名、うち5名が女性)として滞在し、研究を重ねている。

 そのひとつ「氷床コア」研究は、深く氷を掘って調べることで、温度やCO2の量から氷河期などの正確な年代を測るのだが、その調査でも地球温暖化が顕著に報告されているという。

「学者によって意見が分かれますが、仮に温暖化が進んで南極の氷がすべて解けてしまうと、地球上の海面は約60m上がると言われています。世界の多くの都市が海に沈んでしまうかもしれません」