若手アーティストへの苦言もカット

 エッセイで語るのは自身の変態さだけでなく、音楽については厳しい視線。さすがはヒットメーカーだ。量産されるJ‐POPのジャズアレンジについて苦言を呈していた。

《いいなぁ、名曲の原曲がある上に歌なしで。しかもジャズ風アレンジ。しかしですね、ジャズをなめてもらっちゃ困ります。ピアノトリオでモダンっぽくしてますがね、普通の人は全然違和感なく聞いてしまうだろうけど俺は騙されませんよ》

 また若いアーティストがカバーアルバムを出すことにも、

最近よく、そこそこ若い音楽家が「新しい音楽というものはない。すべては過去の引用で成り立っている」と発言しながら、自分がやってることは過去のいいとこ取りばかりな人がいるが、そういう台詞は、服部良一さんや細野晴臣さんなど世界中の音楽を吸収し尽くした巨匠が言って初めて説得力を持つのであって、若造が言っても信憑性はなく、楽をしている自分への言い訳と感じる

 しかし、この憤りは今回の文庫版ではカットされている。

 こちらのエッセイは、くも膜下出血による闘病生活も綴られており、通常版は連載のまとめたものに、闘病日記を加筆する形で発売された。通常版は連日吐き気に悩まされたつらい闘病を記しつつも、看護師に座薬を入れられた場面では、

《その昔行った風俗店で、プレイ後に言われたことがある。「お客さん、ドMだね」》

 などエロ話を入れ込んでいたが、彼女とのSM的なプレイ内容を事細かに記したくだりも含めて、すべて削除されていた。

「今回の修正は星野さん本人の意向が大きかったのでしょうね。修正箇所を見ると、編集者が入れるような修正ではなく、改めて自分の書いた原稿を読み、いまの自分の気持ちと照らし合わせて、表現を変えたり、削除したりしたのでしょう。文庫化するときにここまで読み込んで修正する人はなかなかいないので、忙しい中すごい労力だったと思います」(前出・出版関係者)

 エッセイは、変態さは柔らかくなったが、彼の真摯な姿勢が垣間見えるものだった。きっとこれが今の彼の“胸の中にあるもの”なのだろう。