(c)よしながふみ/講談社『きのう何食べた?』では、数品の献立の、段取りをふくめたレシピが載り、レシピ本としても重宝される
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──『きのう何食べた?』では料理の段取りを事細かに描くシーンが特徴的です。

「あんまりそういう料理マンガがなかったんですよね。でも料理を作る人はみんな、あと一品何にしようかなとか悩んで生きていると思うんですよ。なので献立全部を紹介して、しかも全部同時にできあがる手順みたいなほうがおもしろいなと思って。あと、自分が純粋にそういうのを読みたかったんです

──毎回、段取りのシーンが出てきて儀式みたいですよね。

「ほとんど『セーラームーン』(※2)の変身シーンですよね(笑)。かったるい人は読み飛ばしていいですよ、そうするとセーラームーンが勝手に戦う姿になるからと、それぐらいの気分で描いてます(笑)」

出家というのは合法的な自殺

──『何食べ』は現実の時間に合わせて登場人物が年をとってきています。近年は親や本人の“老い”というテーマも浮上してきました。

「主人公が55歳になってしまって、四捨五入したら60歳だと気づいてギョッとしたんですけれど、きっと本人たちもそうだろうなあと思うんです。みんなそうですけど、きっと自分が昔思っていた55歳じゃないはずなんですよね」

──初期にはシロさんの独身ネタが頻出しています。

連載が始まった12年前は、40過ぎて結婚していないのは珍しいことだと世の中的に思われてたんですよね。特に親にとっては心配の種で、でもここまでくると息子が独身だということはたいした不幸じゃないのではないかと思うんです。子どもが経済的に自立して生きているだけで万々歳じゃないかと。でも10年前はそうじゃなかった」

(c)よしながふみ/白泉社 『愛すべき娘たち』に登場した母と娘の会話は、小2のころの自身の実話とか!

──2003年の連作集『愛すべき娘たち』(※3)では、お見合いを繰り返した果てに出家してしまう女性のお話がありました。衝撃的でした。

出家というのは社会の中で許された合法的な自殺だと思っていて、本当に世の中が嫌になっちゃったら出家したらどうかなと思って(笑)描きました。とある女友達が、税金も払っているし、社会人としての務めを果たしているつもりだけど、なんでこんな恋愛していないというだけで世の中から責められている気持ちになんなきゃいけないんだろう、って言っていたのが印象的だったんです」

──恋愛して当たり前、結婚して一人前みたいな風潮はいまだに強くありますよね。

「強がりではなしに恋人が欲しいわけではないのに、欲しいふりをしなきゃいけないみたいな雰囲気がすごくつらいっていうのは、私にもすごく覚えがありました。今は楽しく暮らしているのに、ひとりで楽しく暮らしちゃいけないんじゃないかみたいに言われているのがとってもつらい、と。そういう話も頭をかすめながら描きました」

──そういう流れは大きくなってきて、いまではそうした自由も認められるようにもなりつつあります。

「なりましたね。私も彼女もマンガを描いていたので恋愛ものを描けないというだけでクリエイターの王道からもはずされちゃっている気がしていました。今はだいぶ世の中も変わってきてよかったです」