今年6月、動物愛護法が改正された。背景には、空前のペットブームの中で顕在化した過剰繁殖や飼育放棄、動物虐待などの問題があった。はたして、法改正によってペットと人間の関係はどう変わるのか。ペット流通の問題に詳しい朝日新聞の記者、太田匡彦さんに寄稿してもらった。

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ペットブームの裏にある悲しい現実

 昭和の終わりごろ、犬の推計飼育数は686万頭(1987年、ペットフード協会調べ)でした。平成に入ると一気に増え、ピークの2008年には1310万頭に達しました。犬猫あわせた推計飼育数は'03年に15歳未満の子どもを逆転し、いまや計1855万頭にのぼっています。

 この間に、まず犬が拾ったりもらったりする外飼いの番犬から、ペットショップで買って室内でともに暮らす「家族」へと、位置づけを変えました。近年は猫も、完全室内飼育が推奨されるようになって日々の暮らしの中により浸透し、家族の一員としての存在感を高めています。

 周辺ビジネスも発展しました。ペットにかける獣医療費は増え、エサは残飯からペットフードにかわり、ペットシッターやペット霊園など新たなサービスも登場しています。ペット関連総市場で見ると、1兆5193億円('17年度、矢野経済研究所調べ)という規模の産業になっています。

 ただ、産業としての発展は同時に、「闇」も生み出しました。犬猫などのペットがこれだけ増え、身近な存在になれたのは、ここ30、40年でいまの形、規模にまで成長したペットショップチェーン(生体の流通・小売業)を中心とする生体ビジネスの存在があればこそです。

 このビジネスは、生産設備として繁殖用の犬猫を大量に抱え、工業製品のように子犬・子猫を量産し、競り市(ペットオークション)を介して全国に流通させ、街中や商業施設にある小売店で大量に販売する──という構造になっています。その過程で、繁殖能力が衰え不要になった繁殖用の犬猫や、売れ残った子犬・子猫が不幸な運命をたどります。

 以前は、そうした犬猫が数多く自治体に持ち込まれ、殺処分されていました。業者からの持ち込みを自治体が拒否できるようになった'13年9月以降は、全国で大量遺棄事件が相次ぎました。このような状況について'15年11月、「ジャパンケネルクラブ」の永村武美理事長(当時)は、あるシンポジウムでこんな発言をしています。

「急激に規制強化が行われると大量遺棄、廃棄ということが必然的に起こってくる。ブリーディングができなくなっても、それを保健所で引き取ってもらえなくなった。どうしたらいいのか、もう知恵の出しどころがなくて、大量廃棄、遺棄をすることになる」