生きづらさの原因が、自分の性質や本質といった変えられないものではなく、後から作られた思考や行動であることがわかるだけでも、意識は前向きになります。後から作られた思考や行動は、壊して捨てることも、作り変えることもできます。そうすれば、いま抱えている生きづらさから、自分を解放することができます。

 思考や行動パターンを崩すために役立つ心理療法のひとつに、『白黒思考改善療法』があります。現状に不満があったり、大きな悩みを抱えていると、マイナスな感情に支配されてしまう場面が数多く出てきます。そういうときに気持ちを切り替え、一歩踏み出すために効果のある療法です。

「不安」の正体とは

 実際のやり方を説明する前に、不安な気持ちを引き起こすものの正体についてお話しましょう。人はなぜ不安になってしまうのでしょうか。

 まず、「お先真っ暗」という言葉をイメージしてみてください。明るいですか? 暗いですか? きっと誰もが「暗い」と答えるはずです。

 では、「暗い」イメージを頭に思い描くと、どんな気持ちになるでしょうか。

 クライエント(相談者)に同じ質問をすると、「不安な気持ち」「怖い」「絶望的な感じ」といった答えが返ってきます。みなさんも、同じようなマイナスな感情を持つのではないでしょうか。

 なぜ暗いイメージを思い描くだけで、不安な気持ちになるのか。それは人の思考パターンが原因です。

 人は先が見えない状況や正体がわからないものに、不安や恐怖を抱くものです。真っ暗な何も見えない場所に置かれたときはもちろん、そういう状況を想像するだけで、「もしかしたら暗闇のなかに、何か危険なものが潜んでいるかもしれない」「誰かが襲ってくるかもしれない」と悪い想像ばかりをして、怖くなったり心配になったりします。

 テレビのバラエティー番組でよく見かける「箱の中身を当てるゲーム(箱の中身はなんだろな? ゲーム)」は、そんな人間の心理をうまく利用しています。

 箱の中には何が入っているのかわからない不安と恐怖で、挑戦者は箱に手を入れるだけで大騒ぎ。さらに、手に何か触れようものなら、怖くて反射的に手を引っ込めてしまいます。手にチクッとした感触があれば、「何かにかまれた!」「もしかしたら、タランチュラの毒針!?」と悪い想像をして、さらに恐怖が倍増します。

 ところが、箱の中身が「タワシ」だとわかればどうでしょう? 何も怖くはありませんよね? 誰もが躊躇(ちゅうちょ)なく箱に手を入れられるようになります。

 私たちが抱く不安も同じようなものです。

 先のことは誰にもわかりません。だからこそ、未来のことを考えると悪いほう、悪いほうへと想像が広がってしまい、不安になりがちです。そして、怖くて箱の中に手を入れられないように、何も行動が起こせなくなります。「先が見えない不安」は行動の最大のハードルになるのです。