“完璧な成功”でなくてもいい

 見えない未来のことをいつまでも考えていると、心は不安で満たされてしまいます。そんなときは、未来に起こりうることを想定して「見える化」し、「白か黒か」「0か100か」といった両極端な考え方を矯正することで、不安をやわらげることができます。

 その際に大切なのは、「最高な未来」「最悪な未来」だけでなく、「最高まではいかないけれど、いい未来」「ほんの少しいい未来」「ほんの少し悪い未来」など、さまざまなシチュエーションの未来を想定しておくこと。

 人は「成功」と「失敗」、「100点がとれた」と「100点がとれなかった」など、「白か黒か」の2択で物事を判断しがちです。そうすると、“完璧な成功”以外はすべて失敗になってしまいますし、100点以外は何点だろうと0点と同じになってしまいます。そういう思考パターンだと、どうしても生きていくのが苦しくなりますよね。

 白か黒だけではなく、「少し成功した」「60点とれた」と、グレーな状況も認められるようにすることは、自己評価を高め、生きづらさをやわらげるために必要なことです。

 未来をイメージするときも「最高」「最悪」だけでなく、その間の状況も想定して未来の選択肢を増やしましょう。未来の解像度が高くなり、自分の中でよりはっきりと先が見通せるようになるので、将来の不安も薄れていきます。

 また、不安が強いときには、考えるのではなくイメージすると気持ちが楽になります。

 何か問題に直面したとき、人は「どうすれば問題が解決するだろう?」と考えてしまうものです。けれども、考えて問題が解決できるのは、経験や知識のあることだけ。そうでなければいくら考えても状況は変わりません。

 考えても解決策がわからないときには、考えるのをやめてしまいましょう。そして自分への問いを「問題が解決したらどうなっているだろう?」に変えて、想像(イメージ)するのです。

 考えているときは「問題」に意識が向いていましたが、問題が解決できた場合をイメージすると意識は「解決像」に集中しはじめます。解決像が想像できれば、それによって気持ちが前向きになり、行動を起こすモチベーションにつながります。

 このように、思考を改善するなかで不安や悩みが取り除かれていくことこそが、『白黒思考改善療法』で得られる大きな効果です。では、さらに具体的な実践方法について、実際に生きづらさを抱えている男性の例をもとにお伝えしましょう。