進さんが亡くなったのは6~8月ごろ。しかし、周辺住民で“異臭”に気づいた人を見つけることはできなかった。盛夏の中、遺体はなぜ腐敗せず枯れていったのか。

110番通報を受け捜査した愛知県警西尾署
110番通報を受け捜査した愛知県警西尾署
【写真】真隣にある母屋とはなれ、捜査をした愛知県警西尾署

 名古屋市立大学の青木康博教授(法医学)は、「バクテリアの繁殖を抑える条件がそろったのでしょう」と指摘する。

「遺体の腐敗は基本的にバクテリアの繁殖によって起きますので、遺体が乾燥してバクテリアの繁殖が抑制されるとミイラ化しやすくなります。体内の水分が流れ出て床などにしみこむと遺体は乾燥します。例えば、床がたたみの場合、水分はしみこみやすいですよね。遺体には骨と皮が残りますが、腐敗した遺体に比べてにおいは少ないので周囲も気づかないかもしれない」

 さらに、栄養失調や飢餓状態がミイラ化を進行させた可能性が高いという。

「バクテリアのとる栄養がないからです。食べなければ胃の中はからっぽになりますから。昔の修行僧が絶食して即身仏になることがありましたが、あれは食べないうえ、風通しがいい場所にするなどミイラ化の条件がそろっているんです」(青木教授)

 遺体の置かれた条件も影響するという。

「室内で亡くなったとき、冷房が効いていると遺体が乾燥することがあります。それと虫が入ってこないこと。特にハエが入ってくると、ミイラ化する前にウジ虫に食べられてしまうんです」(同)

 いずれにせよ、悲しい最期であることは間違いない。わずか約1メートル隣で暮らす両親は、遺体を発見するまでどのような会話を重ねたのか。救う方法はなかったか。