以前は自分の意見を公の場で発表するには、有名人(芸能人や文化人)になってテレビに出るしかありませんでした。言うまでもなく、ごくわずかな選ばれた人しか出演できませんし、当然「テレビに出た、紹介された」ことはステイタスでした。テレビに出る人は好き嫌いは別として成功者でした。昭和や平成中期はテレビ>視聴者という力関係の時代だったのです。

 しかし、ネットの出現で、一般人も自分の意見を自由に発信することができるようになりました。一般人のほうが制約がない分、自由にモノが言えて、支持を集めるかもしれませんし、ある話題がバズったり、炎上するとテレビをもしのぐ伝播力を発揮することもあります。若い世代のテレビ離れが叫ばれていますが、ネットに対抗するにはテレビはご高説を垂れ流すのではなく、「いかに視聴者の側にまわった意見が言えるか、視聴者感覚を持ち続けられるか」がポイントになるでしょう。それなのに「すごいブランドだからありがたがれ」と「上から」言われても、若い世代や特に落語に興味がない女性層にはピンとこず、それどころか「なんで、この人はこんなに偉そうなんだろう」と思われてしまうのではないでしょうか。

 志らくは一般人からの偉そうだという批判に対し、

《この世界に34年いて年齢も55歳、弟子は東京の落語界で最多の18人で、映画監督協会に所属し、演劇20本作った演出家でキネマ旬報の賞を4回受賞した評論家だから実際に偉いのです^_^でもテレビのバラエティではりゅうちぇるが同期。なるほど。》(原文ママ。年齢は当時のもの)

 と、さりげなくオチをつけたツイートをしています。

 芸能人のようにオファーがないと成立しない仕事は実績を重視しますから、志らくがその実績を誇るのは当然のことですし、視聴者だって何の実績もない人がテレビに出たら「何、この人」と見向きもしないでしょう。そもそも、すごくないとテレビには出られませんが、テレビだけが情報元でも娯楽でもない今の時代に、「どうだ、すごいだろう」と言葉や態度ににじませるのはヤバいオジサンなのです。少なくとも主婦層には、受け入れられないのではないでしょうか。

なぜ情報番組のメイン司会は男性なのか

 それにしても、なぜ情報番組の司会は男性がメインなのでしょうか? 同じ時間帯の情報番組を見てみましょう。『スッキリ』(日本テレビ系)の司会進行は加藤浩次、『とくダネ!』は小倉智昭、『モーニングショー』(テレビ朝日系)は羽鳥慎一と、まるで「メインは男性」と決まっているかのように男性が中心になっています。

 この時間帯は女性の視聴者も多いですから、女性がメインになってもいいのではないでしょうか? かつて『あさイチ』(NHK)で有働由美子アナがメインとなり、V6・井ノ原快彦が脇を固めて高視聴率を稼いだという実績があります。

「番組のメインは当然男性がするもの」、制作側はそう思い込んでいないでしょうか。「テレビだから」「男性だから」「実績があるから」あぐらをかいていい時代は終わっているのです。制作側も志らくも、そのあたりに気づいてないとしたら、かなりヤバい気がします。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。