漫画の世界にワクワク

(右から)脳性まひのバイオリニスト・式町水晶、二人三脚の母・啓子さん、高校時代から見守る漫画家・斉藤倫 撮影/廣瀬靖士
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僕は女性に縁遠くて、23年間、彼女が1人もいないんですけど、漫画のパラレルワールドの式町水晶には素敵な女の子との淡い恋があるなんて、今まで頑張ってきたご褒美のごとく歓喜です」(水晶)

 ところが現実の彼の小中学生時代はクラスの女子から無視されるという、いまだに忘れられないイジメがあった。

「漫画の中のように音楽クラブがあって、優しい友達がいたら、当時の僕はどんなにうれしかっただろうな」

 そのパラレルワールドをまぶしい思いで見る、彼の気持ちがどこか切なくもある。しかし、23歳となった今は、自らの過去を俯瞰で見られるようにもなった。

僕は講演会でも過去のイジメのことを話すんですけど、暗くならないように話してもどうしても重い感じになってしまう。でも、漫画という新たな伝え方で角がとれて読む人にも伝わりやすいのがうれしいんです。特にイジメをしてる悪役の子が最高にワルでいい味出してるなって(笑)」

 さらに周囲の人たちから、漫画の絵が「そっくり!」と評判なのが母親の啓子さん

「それは髪型がね(笑)。倫先生の優しい絵でかわいく描いていただいてうれしいです。ただ、私もこれから漫画に寄せてやせていかないと(笑)」

天使のような水晶に、そっくりと評判の啓子ママ (c)斉藤倫/講談社

 そう話す明るい笑顔は絵のタッチそのまま。わが子の“23年彼女いない発言”に、「まさかのカミングアウト!」とツッコむ啓子さん。

「3次元で寂しい思いをしても、2次元で希望があるな」「大丈夫よ、セカンドアルバムも『希望への道』だから」「そういう意味じゃない!」

 まるで母子漫才のように呼吸もピッタリで、周囲を楽しく笑わせる。漫画の中でも、二人三脚で強く優しく、水晶を導いてきた啓子さんの姿が描かれている。

私にも、水晶くんより2つ下の息子がいるんですけど、取材でお話を聞かせていただくと、同じ母として勉強になることや、尊敬することも多くて、いろんなことを教えていただいてます

 と斉藤先生。お子さんはジャズピアニストで、2年ほど前に水晶もコンサートで共演したことがあり「同世代からの刺激を受けた」と話す。

『脳性まひのヴァイオリニストを育てて』(主婦と生活社)著=式町啓子
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