楽曲に込めた“想い”

 この10月にはコミックスの1巻が発売され、さらに式町水晶のセカンドアルバム『希望への道』が発売されるという華々しいことが続いた。

「今回のアルバムは、エレクトリックバイオリンでがんがんロックをしたり、ジャズをしたり、いろんなジャンルを混ぜ込んで、挑戦と冒険が入ってるんです。中でも、去年の8月に東日本大震災の被災者の方たちと対話したときにインスピレーションを得てできた『希望への道』という曲が主役になっています

 さらに、デビューアルバムのタイトル曲でもある『孤独の戦士』に歌詞がついたボーカルバージョンや、漫画『水晶の響』をイメージした『クリスタルソウル』、現在の筋肉ムキムキになった元気な自分を描いた『メイオウ』など、

式町水晶をモデルにした曲が入っていて。これまで応援してくださった方や家族に感謝と“少しは成長してるよ”と伝えたかった」と水晶。

 実は、昨年の暮れに祖父に胃がんが見つかり、バイオリンが持てなくなるほどに心を病んでしまった。

「うちはお父さんがいないので、じいちゃんが働いて育ててくれて。そのじいちゃんに好きなゴルフをたくさんさせてあげたいと思ってバイオリンを頑張ってきたのに、その目標をなくしてしまって」

 そのときの啓子さんの励ましが独特だったと笑う。

みっくんの気持ちもわかるけど、これから漫画の主人公になるのにバイオリンをやめたら、これで打ち切りになるじゃない。メジャーデビューして終わりなの? これを乗り越えてこそ主人公じゃない? って(笑)

 また、家族に心配をかけたくなくて、やめていたボクシングを「またやったらいいんじゃない?」と母が言ってくれたことで、立ち直ることができた、と彼は言う。

「ただ、ひと言いっただけなんですけどね」と啓子さん。

「彼は障がいがあっていろいろできないことも多いけど、ボクシングという少しでもできることをして、自分に自信が出てきたら気持ちも前向きになるのがわかってたので」

 アルバムの中に水晶が大好きな曲『ロッキーのテーマ』が入っているのは見逃せない。

「ボクシングジムの会長さんに聞かせたら爆笑してました」と笑う彼の人生ストーリーから、目が離せない。

式町水晶 2ndアルバム『希望への道』
※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
すべての写真を見る
PROFILE
式町水晶●しきまち・みずき●'18年4月、アルバム『孤独の戦士』(キングレコード、以下同)でメジャーデビュー。2ndアルバム『希望への道』が発売中。12月23日、ライブジュークにて初の広島公演。12月14日は赤坂区民センター区民ホールにて、クリスマス・コンサートを開催。座右の銘は「頑張りすぎずにゆっくりと」
PROFILE
斉藤倫●さいとう・りん● 「別冊マーガレット」でデビュー。以降、『路地裏しっぽ診療所』『ノーにゃんこ ノーライフ』『僕の部屋へおいでよ』など著書多数。現在は月刊「BE・LOVE」にて『水晶の響』を連載中。コミックス第1巻(『ドキュメント読み切り水晶の音』も収録)が発売中。水晶を見つけたときは別の作品を連載中で「ほかの漫画家さんに先に声をかけられないかドキドキしてました(笑)」
PROFILE
式町啓子●しきまち・けいこ●美容師、介護ヘルパーをしながらシングルマザーで水晶を育てる。4歳のときに水晶にバイオリンを習わせ、幼いころから「出会いは行動力がモノを言う」と人との出会いを心がけてきた。'18年に著書『脳性まひのヴァイオリニストを育てて〜母子で奏でた希望の音色〜』出版。母の名言は「感情は黙っていられない」

(取材・文/相川由美)