「個性」を伸ばす! オルターナティブ教育
汐見稔幸(東京大学名誉教授 教育学)

 グリーンスクールが優れている点は、SDGs(持続可能な開発目標)を先駆的に取り入れたところにあります。「君たちこそこれからの社会の担い手だから、持続可能な社会をつくるために考え、行動しよう」としっかりと教育しています。これからの社会を担う子どもたちには、「答えが見つかっていない問い」について自ら考え答えを生み出す力が必要なのです。

 日本の学校は、これまでほとんど全員が机に向かってじっと座っていなければならないスタイルでしたが、中には動きながら考えたほうが集中できる子もいます。リーダーシップを取ることが好きな子もいれば、ついていくことが好きな子もいます。

 さまざまなタイプの子がそれぞれの個性を伸ばすことこそが教育だということに、日本はこれまで気づきませんでした。しかし、最近では、日本でもようやく、子どもが主体性を発揮し、個性や思考様式、行動様式を大切にして表現することが大事であり、そのほうがより能力を発揮できると考える学校が作られつつあります。本来の教育の姿に近づいているのです。

 例えば、「子ども主体の生活」を重要視するフランスのフレネ教育を取り入れた埼玉県のけやの森学園幼稚舎・保育園や都内のジャパンフレネというフリースクール、イギリスの教育家ニイルが設立したサマーヒルを参考にして「自己決定、個性化、体験学習」を基本方針とした福井県のきのくに子どもの村学園など、オルターナティブ教育は注目を浴びています。2020年には軽井沢風越学園が開講しますし、広島県では'22年度から公立イエナプラン教育校をスタートさせることが決まっています。これからの日本の学校教育は、こうしたオルターナティブ教育に先導されて大きく変わっていくことが求められています。

(取材・文/太田美由紀)